あめのひ



やっと高速を降りる場所が近付いてきた。

ウインカーを倒すとカチカチと規則的な音が車の中にひびく。

 

さっさと車線を変えたいけどそっちの車は動かない。イライラする。

渋滞だから仕方ないのは分かってるけど、

今の気分は限りなく攻撃的な方向に降下中だ。

 

待ってるのはあの子だから、だろう。

 

まったく、何だってこんなに車多いんだろ?

平日の真昼間だってのに。

もう約束の時間は過ぎてる。怒ってるかな…?

 

早く会いたい。

 

 

「あ。」

 

雨、だ。

 

####

 

「…猿野くん。」

「あー…来た。」

 

ようやく着いたら、彼は雨宿りもせずにそこにいた。びっくりした。

こんなに…濡れて。

 

「ホントに…ごめんね、待たせて。」

芸もない謝罪の言葉が口をつく。

こんな謝り方じゃなくて、もっとちゃんと言わないといけないのに。

必死で言葉を探していると、彼は濡れたまま顔をあげた。

「…うん。」

ほっとしたような笑顔で。

その顔に僕はまた驚く。

 

「…怒らないの?」

 

「あー…そ、だよな。怒るとこなんだけどさ…。」

 

「きてくれたから、いい。」

 

言葉を聞いた途端、僕は彼を抱きしめていた。

こんなカオ、させた自分に腹が立って

そんなカオする彼が愛おしくて。

 

「ちょ…白雪さん、服濡れるって…。」

「いいよ、濡らしてよ。」「…何、それ…なんかエロくさ…。」

からかうように笑う彼は、いつもの調子を取り戻したのか、そう言った。

それどころじゃないだろう。春先の雨で体はずいぶん冷えていた。

 

「…笑ってないで早く車に乗って。」

「や、車も濡れるだろ?」「だから濡らしてよ。」

 

「だからその言い方…。」少しくどいから、僕も仕返しをしておこう。

 

「いいよ?」

 

「何が…。」

どうやらカウンターは成功したようだ。彼は口をつぐむ。

その様子がまた可愛くて、少し赤くなった頬にキスする。

 

「行こう。」

「…ん。」

 

あ、雨、あがったみたいだね。

 

着替えて、雨上がりの街をこれからどこに行こうか?

End

 


松井2号さまに、自動車免許合宿のエールがわりに送らせていただきました。
レミオロメンの「Wonderful&Beautiful」という曲がイメージですが、とちゅうから変ってるかも;

押し付け文章、失礼いたしました!!


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