欲しかった言葉






『待ってくれよ大神さん!!』

何で俺を助けたんだよ

何で俺なんか助けたんだよ…!!

アンタにはもっともっとでっかくなってすげえ野球選手になって

すげえ人になるはずだったんだ

俺なんか助けなければよかったのに




「…やなぎ…。」

「う…。」

「おい御柳…!」

「……かみ、さん…。」

「御柳!」

「!」

眼を開けると、そこに居たのは

髪が黒くなった大神さん…


じゃ、ねえ。


「な!!」

「おう、目ぇ覚めたか?」

「さ、猿野?!」

目の前にいたのは全くの別人。

素人の癖に口ばかりでかくて、くだらねえことばっかり抜かしやがって。

…けど、根性だけはある…っつか、ムチャクチャやりやがる。

そんな奴。

大神さんじゃねえ。


って、オレ、今…。


「ほれさっさと顔洗って来いや。
 男が夢見て涙こぼしたってかわいいのは5歳までだぞ?」

「んな…!!」

うわ、最悪。
やっぱオレ泣いてたのかよ!!

それもよりによってこいつに見られちまった…。


こいつに(すげえ悔しいけど)諭されたばっかだってのによ…!!


「…。」

「どした?村中なら刀を監督んとこに返しに行ったけど…。」

「…別にそんなこた聞いてねえ。」

「そっか?じゃあ何だ?すげえ何か聞きたそ〜な顔してるぞ、お前。」

…くそ。何でこう鋭いんだよコイツ。

めっちゃカッコ悪ィって自覚はあるけど…。
あんな夢。続けてみるとなんかナーバスになっちまうのも仕方ねえだろ。


「……笑わねぇのかよ。」

「は?」


「だから!!泣き寝入りなんかして弱っちいとか言わねえのかよ!」


恥ずかしいこと言ってるのは分かってるけど、口がとまんねえ。


また呆れてるんだろうなコイツは。


そしたら。


「何で?」


え?


「辛いって泣いてたんだろ?笑いどころじゃねえじゃん。」


コイツは何の気なしに言いやがった。


「…小せぇことに泣いてて…カッコ悪いとかおもわねえのか?」


そういうと、コイツは微笑んだ。
コイツのこんな顔、初めて見た…。


「そりゃそれで立ちすくんでうっしろむき〜ないじけ方されたらオレも発破かけるけどよ。」


「…。」


「辛かったし、今も辛いんだろ?
 だったらそれはオレがどうこう言うことじゃねえだろ。」


「…お前…。」


なんだよ…コイツ…。

カッコいいこといいやがって…。


マジであの人に似てる……。


「猿野…。」


「ほら、とっとと片付けるぞ。お前も手伝えよ。」


「わぁったよ。」


「お?何だ今日はえらく素直だな〜。」


「ほっとけ。」


オレは絶対赤くなってるだろう顔を見られないようにしながら手伝いをはじめた。




猿野天国。


オレが多分ずっと欲しかった言葉を こいつはくれた。


今はまだ言えないけど、いつかこいつに言わなきゃいけないことができた。



ありがとう ってな。





end

今回もリハビリです。
ネタバレ満載の芭猿…。というか芭+猿?
2週間以上書いてないとどうも文の書き方忘れそうで(泣)
今度こそリクエスト消化しますね…。

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