「ぐっ…!」
何度目かの鍔迫り合いのあと、押し負けた幸村は地に背を叩きつけられた。
すぐに起き上がろうとすると。
ドスッ
「!」
幸村の首筋を交差した太刀が縫いとめるように、
2本の刀が地にささる。
身動きが封じられた幸村は、覚悟を決め、
相手に告げた。
「見事だ。独眼竜…。」
肩で息を切らせながら、政宗も言った。
「ああ…オレの勝ち、だな。」
幸村は負けを認めながらも満足げに微笑んだ。
思い残すことはないほどに…素晴らしい一騎打ちができた。
「さあ、政宗殿。
首をとっていただこう。」
「……あ…。」
「…?」
ふと、政宗の動きが止まる。
まるで幸村を殺すことに、今気づいたかのように。
「ゆき…むら…。」
「?どうなされた、政宗殿。早く決着を…。」
だが政宗は一向に動かない。
硬直したように動けない幸村を見つめ続けていた。
「政宗…殿?」
「……何で、今気づいたんだ…。」
愕然とした表情で政宗はつぶやいた。
ずっと幸村に抱き続けていた、好敵手への昂揚ととらえていた感情。
それが別の名を持っていたことに。
「政宗殿?」
幸村は不思議そうに政宗を見た。
これから殺されることを何のためらいもなく受け入れた顔で。
はやく、ころせと。
おまえはおいていくことをなんともおもってくれないのか
名前のついた感情は悲嘆の咆哮をあげた。
無邪気な死相はそれを知らず。
心を殺した。
end
さて、このあと政宗は幸村を殺すかどうか。
皆様のご想像にお任せをv(おい)
戻る