愛はどんな形もなさない、心の底で熟(う)れるだけ
「幸村。」
「…政宗殿…。」
広大な庭の片隅でひそかに行われた口づけ。
それを見たのは偶然だったのか。
なら、俺はそれを少なからず恨むだろう。
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「政宗様。」
「Ah?どうした、小十郎。」
あの現場を目撃してから数日、真田幸村は帰途についた。
小十郎が政宗の部屋に意を決して入ったのは、その晩のことだった。
「なんだ?いつもにもましてSeriousな顔して。」
「…無礼を承知で進言をお許しいただきたい。
真田幸村のことです。」
ぴくり、と政宗の体が反応した。
小十郎の云わんとすることを理解したのだろう。
政宗はゆるりと視線を向けた。
「…わかってるんなら話は早ぇな。
見たんだろ?オレは幸村と別れる気はねえよ。」
「……それは無理な話です。」
「無理?Hah!誰が決めたんだ?」
「誰がという問題ではありますまい?」
小十郎は食い下がる。
しかし。
「小十郎。お前も問題すりかえてんじゃねえのか?」
その言葉が小十郎を凍りつかせる。
「そんなJealousy一色の顔してくだらねえ小言を言うんじゃねえよ。」
「…私は…。」
「小十郎。オレに嘘はつくなよ。
お前自身にもだ。」
政宗は挑戦するような眼で言った。
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否定できなかった。
そのことが思ったより俺を打ちのめしていた。
気づいてなどいない、知らぬままでよかった事を知ってしまった。
俺は確かに紅き虎の子に惹かれていたのだ。
政宗様の言われることに、間違いはない。
だが何ができるというのだ。
何がしたくとも何ができるのだ。
主が口づけていた唇を奪いたくとも。
そのしなやかな肢体を抱きたくとも。
あきらめることを前提にした思いなど何になるというのだろう。
主は言うだろう、自分に嘘をつくな 戦えと。
だができはしない。
あの瞳は主を映し、あまりにも幸福に光っていたのだから。
end
うーん、らしくないかも…。
最初から諦めモードとは…;;