にこり、と女官は笑ってそう言った。
かたんと音がして薬湯の入っていた器が転がる。
どさりと音がして己の体が横たわる
かくりと意識は反転する。
#####
「…きむら…幸村…!!」
「……。」
うっすらと眼をあけると、今にも泣きだしそうな隻眼の青年が視界に入った。
安心させようと声を出そうとするが、音にならない。
「無理すんじゃねえ。毒に喉をやられてるんだ。
三日は声が出せねえんだと。」
「……。」
そうか、自分は毒にやられたのだ。と納得した。
自分が奥州にいることを好まない誰かがやったことだろう。
そう考える。
もちろん政宗が企てるなど考えてもいない。
いや、思考からわざと外していた。
たとえ互いに抱いている愛情が本物であっても、それとは別の理由はいつでも考えられるのだから。
自分たちはそういう時代に生きているのだから。
「…幸村、聞け。」
「…?」
改まった声に視線をむけなおす。
そこには確固たる意志が見られた。
「お前に毒をもったのはあの女官だ。
あいつは戦で夫をお前に切り殺された。
それを恨みに思っていたからだ。」
「…!」
驚いた。だが納得もした。
自分個人に向けられる殺意であったからだ。
それは無理のないことだろう。
「だからお前に毒を盛った。
幸い素人のやることだ、毒の分量は甚だいい加減でな。
お前は命をとりとめたってわけだ。」
「…。」
こくり、とわかったことを伝える。
「だがお前を殺そうとした罪は重い。
女官は斬り捨てた。」
「……!!」
斬り捨てた?殺したのか?
「何を驚くんだ?幸村。」
「……!」
首を振って伝える。
だめだ、そんな事をしてはいけなかった。
その女官の気持ちは分かる。
自分だって同じ立場に立てば…。
「そうだな。
だからオレはあの女を殺した。」
びくり、と肩がふるえた。
「オレの最も愛する人間を殺そうとした。
だからその報いを受けてもらっただけだ。
you
see?」
「……。」
でも自分は生きている、生きているのに。
「そうだ。今後もお前を殺させないためにな。」
にやり、と彼はわらった。
ふと冷たい感覚が背筋を走ったように思った。
まるで毒のように。
「愛してるぜ?幸村。」
end
なんとかオチがつきましたか;;
ちょっと怖い政宗さんです。