宝箱から愛は出てこない
ダンジョンの奥底、宝箱発見。
◎ボタンを押す。
たからものが見つかった。
こんな風に見つけられたらいいのに。
はあ、と息をついて兎丸比乃は自室でため息をついた。
今日もまた見てしまった。
親友と想う人のいる場面。
二人の関係を知ったのはずいぶん前のことだ。
その時は自分の気持ちなど自覚もしていなかった。
だが、徐々に気持ちが軋むのに気づいた。
結論が出たのは、情けのないことについ最近だ。
「もっと早く気付いてたらよかったのかなー…。」
司馬より好きだと告げていたら。
司馬より背が高かったら。
司馬のように大人っぽく見えたら。
(兄ちゃんも振り向いてくれたかな…。)
一番欲しかった宝箱。
気づいたのは空になった後だった。
そのうえ宝箱の中身はとても取り戻しにくいもので…。
(でも、取り戻せるかな…?)
ふと、その可能性を考えてみる。
少ない、とは思う。
けれど想い人の言葉を思い出す。
『奇跡ってのは起こるもんじゃねえ
人か起こすもんだ。』
(…ふふ…。)
むくりと身体を起してみる。
「そうだよね。
奇跡はおこさなくっちゃ。」
隠しアイテムになった中身を見つけてみよう。
笑みはまた少し深くなった。
end
…黒くないつもりなんですがなんか黒い;;
兎丸君の役回りはこういうのが多い…気がします。