今年も一緒に

 

 

 「もしもし、猿野さんのお宅っすか?あけましておめでとうございます。

 僕子津ですけど。」

『あら、子津くん?あけましておめでとう。
 …うちの天国が今子津くんの家に年始のご挨拶にって…。

 …何かやらかしたかしら?』

 

「や、そうじゃないっす。

 猿野くん、ちょっと騒ぎすぎて寝入っちゃッたんすよ。

 それで今日はうちに泊めようかと思って…。」

『あらあら、わざわざごめんなさい。

 新年早々うちの馬鹿息子がお世話になっちゃって。』

 

「はは…そんな、こちらこそいつもお世話になってますし…。」

『いえいえ、とんでもない。

 それから子津くん。天国に伝えてくれる?

 新年早々未成年でお酒飲んだのは見逃してあげるから、あさっての配達はちゃんとやりなさい。ってね。』

 

「は、はい!!」

 

『じゃあね、子津くん。

 今年もよろしくお願いします。』

 

「はは…こちらこそ…。」

 

プツ

 

 

子津は、恋人の母との電話を終えてふう、と一息ついた。

流石に女手一つで天国を育てた女性。

 

「…全部バレてるっすよ…猿野くん。」

 

「…ん〜…。」

 

子津の自室のこたつで気だるげに身動きを取るのは、猿野天国。

 

新年の挨拶に来て、子津の両親と楽しげに話しこんだあと、

挨拶に持参した猿野酒店の人気商品、自家製御屠蘇をしっかりとのんでしまい、寝入ってしまったのだ。

 

それをしっかり見越している猿野母に、若干恐怖を覚えつつ。

天国の宿泊許可を得た子津は少し安心して、寝入る天国の傍に寄った。

 

天国は幸せそうな寝顔を見せる。

無防備な恋人の姿に少し苦笑しながら、子津も暖かい気持ちになった。

 

そして天国の隣に足をいれ、並ぶように横になる。

 

 

(これくらいは、いいっすよね。)

 

そう思い、夢の世界にいる恋人の肩をそっと抱き寄せた。

 

 

「今年もよろしく…猿野くん。」

 

すると、腕の中の天国がふと身じろぎをする。

「ん〜…子津…。」

 

「え?」

起きたか、とどきりとする。

 

「甲子園…今度こそ一緒に行くぞぉ…。」

 

 

「……はいっす。」

 

子津は、その言葉を胸に、もう一度天国を抱きしめた。

 

 

今年も好きな人と憧れの場所を目指すことができる。

その幸せを思いながら。

 

 

                           end

 


松井2号さんに年賀に押しつけました子猿年賀小説です。
あっさり風味の甘さ。あっさりすぎて味がしなくなったような;;

お受け取りありがとうございましたー!!

 

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