紳士な淑女は意外に策士



「あら?黄泉ちゃん?」

(これでも)大阪きっての高校野球選手、日夜鳥は。
県対抗総力戦を終えた夜に、怒り狂う監督から逃げて(日夜鳥は気にしてないが)
明日には発つホテルの中庭を散歩していた。


そこで人影を見つけた。
その姿はいつもクールで野球に対する以外何も興味をもてないようなそんなチームメイトの姿。


日夜鳥はそう思い声をかけたが。


それは彼ではなかった。


「あら…?アナタ埼玉のセクシーボーイ?」


「へ?あ、アンタ大阪選抜の●G?!(誤解だ)」


そこにいたのは、埼玉県の4番バッター。
猿野天国だった。



#######

「あ〜それで逃げて来たんすか。」
「そぉなのよ〜〜、もううちのカントクったらお固くって困っちゃう。
 お前らのせいだ、の一点張りなのよ。」

「…はあ、あのオヤジは全く…。」

日夜鳥の言葉に、天国は大きくため息を付いた。
指導者としてはどうなんだという、自分の父親の言葉に恥ずかしくさえ感じてしまう。


「すみませんね、ホント。」
「?あら、何でアナタが謝るのかしら?」


「え…!あ。」

天国は口をつぐんだ。
彼は知らないのだ、自分と…雉子村親子との関係を。


「いえ、その…。」

いい辛そうな天国の様子に、日夜鳥は何か察したように。
天国の頭を軽く撫でる。

「いいわよv言いにくいなら無理しなくても。
 お兄さん可愛いボーヤには弱いのよお?」


「そ、そっすか…。
 ありがとうございます…。」

思いがけず慰められ、天国は困惑しながらも笑顔を見せた。


(やっぱり…似てるわねえ、セクシーボーイ。)


「それにしても、アナタ凄かったわねえ、黄泉ちゃんの球をホームランしちゃうんだもの。
 そのセクシーさには脱帽よ、一億セクシーはプレゼントしちゃうわねv」

「…あはは、そりゃオレは埼玉の超有力株っすからね!」

話題を変えると天国はいつもどおり、明るく…大げさに言った。


「そうね、アナタプロになれるわよぉ?一年生でそれだけセンスがあるんですもの。
 まだまだプレイは荒いみたいだけど華のあるプレイをできる選手になるわね。絶対よ?」

日夜鳥は天国の言葉に素直に応じた。
その絶賛の言葉に天国のほうが恐縮する。

「え…そんな、褒めすぎっすよ!」
「本当の事よ?
 アナタはすごい才能があるし努力も惜しんでないでしょ?
 それにアナタのプレイはとっても魅力的だわ。
 私はそう思うけど、セクシーボーイ?」



「……。」



「え、ちょっと、どうしたの?!」



「え…。」



天国は自分が涙をこぼしていることに気づかなかった。


##


「…泣き止んだ?」

「…はい、すみません。」

「もう、いきなりそんな可愛い泣き顔見せてくれるなんてダメじゃないの。
 お兄さんクラクラきちゃうから。」

「…はい。」


思いがけず、日夜鳥の言葉が嬉しくて。
不覚にも泣いてしまい天国は恥ずかしくなった。


そして日夜鳥はそんな天国の背中を慰めるように撫でてくれた。
その優しさが、今の天国にまたしみてくる。


頑張って頑張って 頑張ったね、と。
プレイを見て分かってくれる人がいる。

出来損ないなんかじゃないと言ってくれる人がいる。


今、ふいに実感した。

それが嬉しくて。



どこか切なくて。



「…猿野くん?」

「え?」

ふいに名前を呼ばれて、天国が顔を上げると。

丸いサングラスを外した、日夜鳥の意外にも端整な顔が近寄ってきて。


キスされた。



「…な…な、な…!!」

「可愛い顔してお兄さんを誘惑するからよ。
 本気になっちゃったじゃない?」


「…本気って、そんな。」

天国がわたわたと焦るのを楽しそうに眺め。
日夜鳥はサングラスをかけなおす。


「ま、その話は置いといて…元気になったみたいね?」


「///…おかげさまで!」

振り回されていることに気づき、天国は憮然とするが。
それが日夜鳥の優しさであることにもしっかり気づいていた。


だが、それを素直に認めるのも彼女が出来たばっかりなのに男に唇を奪われた身としてはしゃくで。


「あら、もう行っちゃうの?」


この場を退散することにした。


「あたりめーっすよ!!これ以上いたら何されるかわかねえよ!!」

「期待してるんだ♪」


「違う!!」

日夜鳥の言葉に怒って天国が踵を返すと。



日夜鳥は声をかけた。



「またね、猿野くんv」



その日意外な人物に意外にも慰められたこと。


自分は忘れることは無いだろうと、中庭を去りながら天国は思った。





おまけ



「ね〜黄泉ちゃあんV」

「日夜鳥…貴様どこにばっくれてた…。」

「あんv固いこと言いっこなしよぉ。
 私、新たな恋に燃えてるんだからv」

「知るか!」

「やん、行かないでよ〜〜アナタの弟くんの住所教えてくれればいいから!!」

「…!!!??」


…どうやら彼は全て知っていたようである。


黄泉が教えたかどうかは…まあ、言うまでもないだろう。



どちらにしろ、近日中に十二支高校にハイテンションなピンクの堕天使が現れることも

どうやら確実なようだった。




                                                       end



笑ってください。
マイナーCPサイトの本領発揮、日夜鳥×猿野です。
いや〜楽しかったです、書いててかなり!!
意外と男前になってびっくり。
こういうオカマキャラはなんか優しそうだなと、勝手に思い込んでますので…。

余談ですがDJ OZMA の「アゲ♂アゲ♂every騎士」
日夜鳥くんと鷹羽くんに歌ってもらいたいとか思ってます。


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