王様の恋人「え〜?試合が入った?」「ああ、すまん。」久しぶりのデート前日、携帯から入った連絡は恋人の急用。当然のことながら、連絡を受け取った猿野天国は不機嫌になる。「なんだよ〜せっかく久しぶりのデートだってのに!!あの仮面監督、前に仏教先輩から習った呪術の実験体にしてやる〜!!」「おい。微妙に本気を感じさせる言い方はよせ。」連絡をしたほう、つまり天国の恋人 屑桐無涯は、年上らしくたしなめる。「むう。」微妙と言うより天国としては半分以上は本気だったが。「だが、試合は午前からだ。終わった後なら少しは時間が取れるが…。」「え?マジ?!」天国には意外の申し出だった。何しろ、この恋人と来たら自分の高校の「野球LOVE」を公言して憚らない主将と同等以上の野球ラバーである。部活が完全に休みである日(つまり理由があってグラウンドが使えない日など)意外であれば、必ず夕方まで本校で練習をしないと気がすまない。勿論他校に赴いていっての練習試合もしかり。他校同士の試合を偵察に行った後ですらしっかり本校にもどって練習をする。そんな恋人が試合を終えた後に自分のために時間を取ってくれるというのだ。嬉しくないはずはない。「あ、じゃあオレその試合見に行くな!!終わったらそのままデートできるし!!」「…試合に来るのか?」「ん?」屑桐の声は、少し不満げである。「何?なんかダメなわけ?」「いや・・・ダメというわけではないが…。」屑桐にしては珍しく歯切れの悪い言動である。だが、天国としては少しでも長く恋人に会いたいという望みの方が強く、疑問を払って捨てることにした。「じゃあ明日な!!華武で!」と、言うわけで天国は機嫌を回復し、床に着いたのである。############翌日。天気は快晴。絶好のデート(と試合)日和である。天国は嬉嬉として家を出て行った。(そういえば屑桐サンが他と試合してるとこってはじめてみるな〜。)以前試合をしたことはあるが、あの時とはまた違う。客観的に屑桐の試合を見ることができるのだ。(よっしゃ、ついでに偵察もしちゃれ。)恋人ではあるが、野球選手としてはライバル。偵察もかねて、ちょっと真面目に見せてもらおう。そう思っていた。そして、天国の乗ったバスは程なく華武高校にたどりついた。(ひょっとして屑桐サンこの天才猿野に偵察されんのが嫌だったりして〜♪)なんとなくご機嫌で、グラウンドに向かった。すると。「キャーーーーッ屑桐先輩!!」普段から聞きなれてきた黄色い声が響いた。…多量の女生徒たちの声である。そして、その黄色い声の内容は。「…屑桐先輩…ね。」ドゴォッ「ストライ〜〜ッバッターアウトォ!!」マウンドに昇っている、自分の恋人である。天国は女生徒の後ろからグラウンドに視線を向ける事にした。スコアを見るとすでに3回で10−0。華武校が大量にリードしている所である。「さっすが…。」そして、試合は着々と進んでいった。「御柳く〜〜〜んっ!!」「桜花く〜〜ん、素敵!!」「朱牡丹くんっかわいいーーーーーっ!!」「久忙く〜〜ん、カッコいい!!」試合は面白いが、どうにも女生徒達の声が耳障りである。しかも。「屑桐先輩、大好き〜〜っ!!」などという声援が交じっているのである。(…屑桐サンは…オレのだっつーの…。)天国は無意識に思う。(って…やば、何考えてんだよオレ…!)自分の考えていた事に密かに照れるが、天国は心の苛立ちを抑えられない。「…よし。見てろよ。」天国はある決心を固める。###########「ゲームセット!!」試合は終わった。華武校の大量得点により、いつも通りの終了である。「ふう。」屑桐は一息つくと、グローブをはずし、観客の方を見渡す。当然、来ているはずの恋人を他の奴らより先に見つけるためだ。(…分かっていないからな、あいつは…。)天国は全く気づいていないが、華武校のメンバーは天国のことをかなり気に入っている。それはもう恋愛感情を問答無用に抱いちゃうくらいに。特に御柳や朱牡丹は、屑桐から天国の恋人の座を奪わんと虎視眈々とチャンスを狙っているのだ。だからあまり華武高校に来て欲しくはなかったのだ。そんな不安感を抱きながら、天国の姿を探す。しかし、見当たらない。(…来ていないのか?)「屑桐先輩〜〜!!」「何?」突然、女…にしては低い声が近づいてきた。声に視線を向けると女…に見える人物が走ってくる。三つ編み。 セーラー服。 厚化粧。(いつもより本気でしてる)もう分かっただろう。天国の女装バージョン。最強の乙女。明美である。「きゃあああ、素敵だったわああ!!結婚して!!つーかしろ!」ぐわば。とんでもない言葉と一緒に屑桐に抱きついてきた。(さ…猿野?!)屑桐は速攻で天国と気づいたらしい。しかし咄嗟の事で声が出ず、そのまま明美のカラダを受け止める。「いや〜〜〜っ!!なによあの女ーーっ!!」「屑桐先輩から離れなさいよ!!」フェンスの外から屑桐のファンであろう女生徒たちの非難の声が響く。「ほーーーーーっほっほ!!無涯はアタイのものよ!!くやしかったらベルサイユにいらっしゃい!!」明美は勝ち誇った笑いを女生徒たちに向けた。まあつまりは。「…嫉妬したのか?」ぼそっと明美(天国)の耳元で屑桐が呟いた。ちなみに屑桐さん、腕はしっかり明美の腰に絡めていたりする。「………っ。///悪いかよ。」天国は図星を指され赤面して、小声で答えた。「いや、…悪くない。」屑桐は腕を背中に回し明美のカラダをぐっと抱きしめた。そりゃもう。公衆の面前で。「な、な、な、何してるんすか!!屑桐サン!!あんた猿野はいーんですか!!??(よし!オレが早速もらう)」「ちょっとちょっと、屑桐先輩、浮気気〜〜?!(@0@)/(今すぐ猿くんにメールで報告する気!!)」「いやあああっ!!私の屑桐先輩が!!」「やだっ離してよ〜〜〜!!」「五月蝿いぞ貴様ら。オレは最初からコイツだけのものだ。」「/////!!!」天国は真っ赤になりながら 屑桐の言葉をこの上なく幸せに受け止めた。.おまけ「で、いつ結婚するんだ?」「な!!アレはジョーダンで…。」「オレは本気だぞ。」「ちょ、ちょっとま…って、何親に連絡してるんすかアンタはーーーっ!!」王様は やっぱり王様でしたとさ。END
橘かつみ様との相互リンク記念にお渡ししました。
リクエストは「猿君、初めて屑さんの練習試合を観に行く」
「見学者にモテモテの屑さんに焼もちしてしまう猿君」とのことでした。
そういえばウチのサイトでお猿からの焼もちは初めてかも。
あまりリクエスト消化できなかったのですが…かつみ様、駄文送りつけてマジすみませんでした!!