支配するモノ
夜中。天国の携帯が鳴り響いた。
「…はい。」
『猿野クン?』
「また、アンタッすか…。」
『あら。ご挨拶ねえ?
今日の試合どうだったかしらって、心配して電話したのよ?』
「…結果ならメールしたはずですけど?」
『メールだけなんて寂しいじゃない?』
「オレは寂しくないっす。」
冷静に即答する天国。
だが、紅印もその答え方に動じることも無く。
『私はさびしいわよ。』
「……。」
『こうやって思わずあなたの家に来ちゃうくらいにね。』
「え?」
何気なく言われた言葉に、天国はすぐさま反応し。
カーテンを開けて、窓の外を見た。
すると、言ったとおりに。
電話の相手がいた。
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「何考えてるんですか全く…。」
結局そのまま放置するわけにいくはずもなく、天国は紅印を部屋に通した。
紅印はにこにこと笑う。
「猿野クンのことしか考えてないわよv
こうして心配してばかりいるわv」
「うそばっか。」
「あら?どうしてそう言いきれるの?」
「だってアンタ、オレのこと知らないじゃん。」
「アナタだって私のこと知らないでしょう。
私の心の中なんてわからないわ。」
紅印の切り返しに、天国も動じない。
「わかるよ。アンタの眼。
オレを奪おうとばっかりしてる。」
天国の言葉に、紅印はふと表情を変える。
さっきまでの笑顔とは違う、含みのある笑み。
「…あら、分かってるじゃない。
じゃあどうして嘘だなんていうの?」
「心配ってのが嘘だっつってんすよ。」
「…どういう意味かしら?」
紅印は天国の反応が楽しかった。
思ったとおり、いや、思った以上に目の前の少年は鋭い。
その瞳の力も。言葉も、存在そのものが。
鋭利な刃物のように。
「アンタは、オレをアンタ…中宮紅印という檻に閉じ込めようとしてるだけだ。」
そうやって、どこにでも臆することなく切り込んでいける。
紅印は天国の言葉に答えずクスクスと笑う。
天国はふっと一息つくと、また話し始めた。
「心配するフリして…全部オレを支配したいんでしょ?
中宮紅印さん。」
クスクスクスクス
紅印は笑い、そして口を開いた。
「ねえ、猿野クン…。
支配って言葉は、支えを配る…と書くのよね。」
「ええ…。」
そう言いながら紅印天国の腕にそっと触れた。
掴むのではなく。天国の体を支えるように触れた。
「こうやって…。いろんな方向から支えて…。
いつかアナタがどこにも動けないようにどこからも支えて。
それを支配する…と言うのかもしれないわね。」
「……。」
「私はそうしたい。
でも、あなたはそう簡単には許さない。」
「勿論。」
「だから私はアナタをもっと支配したくなる。」
「……!」
天国は触れられていた腕に突然引き寄せられ。
唇を 奪われる。
そして、それはすぐに離れた。
「…アナタと居ると私は自分が男だってこと…改めて感じるわ。」
そしてそれがとても嬉しい。
「……関係無いでしょ、ソレ。」
「そうね、今は関係無い話だわ。
でも私には大事なこと…。」
それだけ言うと、紅印は立ち上がる。
「次からはもっと責めさせてもらうわよ。
こっちの手の内が知られているからにはもう遠慮しないわ。」
紅印の言葉に天国は仕方ないなという顔をする。
「だからってそー簡単に落ちませんよ。オレは。」
「…でも、いつかは私に支配されてちょうだい。」
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窓から帰っていく紅印を見送りながら、天国は小さくつぶく。
「いつになるかな?」
アナタの心がオレの全身を支えるのは。
end
久しぶりの単発小説です。
今回はある名作漫画から「心配も一つの支配の形だね」というセリフがあって
ここからムラムラと湧き出てきました。
あんまりいい形にはなりませんでしたが・・・。
あああああ早くリクエスト消化しないと!!!