雨音





雨の中で、雨の音の中で
このまま一緒に消えてしまえたらいい、なんて。
彼女がやろうとしたように。

そう思ってたなんて。

あなたが知ったら。
あなたに知られたら。

いっそ知って。



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「止みませんね。」

「お前完璧キャラ演じてる割にこういう時役に立ちたねえな。」
「そう言われましても、気象予報士の資格は持ち合わせてませんからね。」
「持ってるとか言われても違和感なさそうだけどな。」

「それは随分買い被られたものですね。」

下校途中、彼と二人で夕立にあった。

今日は、涼宮さんの私用でSOS団は休みとなって。
それなのに彼と二人で下校していたのは、
なんの事はない彼女の命が下っていたのだ。

内容は…まあ説明するほどのものでもない。
ただのいつも通りのサイト更新だったわけで。
それを命じられたのは彼一人だった。

ちなみに僕はクラスのHRが長引いて一人残った彼と時間があって。
だから、この雨に二人であったのは本当にただの偶然だと思う。

わけで。



……何とも思考が言い訳がましいことだ。

こうも偏りのある自分の現在の思考回路には、理由があった。
質の悪い事に自覚つきだ。



理由は…簡単だ。
二言ですむ。

彼が好きだ。
けど彼女が怖い。

だから、わざとじゃないと…この二人きりの時間は僕のせいじゃないと。


自分自身に言い訳をしている。

それほど自分がこの状況に舞い上がってしまっているんだろう。

…重症、だな。


雨音が響くなか、小さく溜息をついた。

雨はまだ止む気配を見せない。


ふと。


世界に二人だけになったような錯覚をする。


…錯覚をしたくなった。


見上げると雨が落ちてくる。
横には彼の気配だけ。


…もしこのまま…。



このまま



「…早く止むといいな。」
「……そうですね。」


彼の声が僕の意識を戻す。

そう、そんな事考えてもいけないのに。
気付かれないよう自嘲した笑みを浮かべた。

「…車を呼びましょうか。」
「いや、もう止むだろ。」


彼が言うと程なく雨足が絶えはじめた。


僕の閉鎖空間が崩れていく。



……何を言ってるんだか。



「ほら、帰るぞ。」

「え…まだ雨が…。」

「いいから。帰るぞ。」


「…はい。」

少なからず傷つく発言だなと思うが、顔には出せない。
諦めの気持ちで弱まった雨の中に踏み出す。


少し冷たいかな。


「古泉?」

不審そうに眉をひそめる彼に、僕は笑いかけた。


雨の中 それは多分 泣いたように見えたかもしれない。

もしそれを知られたら。





僕は彼を彼女の雨の中に隠されるのだろう。

今度こそ消えることのない 雨音の奥へ。




                                      End



昨日解説したハルヒオンリーの携帯サイトよりさっそくこちらにも再録です。
携帯サイトを開設した理由は…あー、なんのことはないですが。
携帯を新調したのと、気分転換…;;あんまり更新が遅滞してるもので。
 自分の首を絞めるのは分かってるんですけど…;;
とりあえず気持ちの赴くままに。

全部じゃないですがこちらにも携帯サイトにアップした文を再録していこうと思います。
ではこれからもお付き合いをよろしく…!


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