遅かりし感情
10
予想よりやや強い態度を見せたものの、榊君は話してくれた。
彼女のため、という言葉が効いたようだ。
助かりはしたが…彼も彼女に悪からぬ感情を抱いているようだ。
それはありがたくない状況である。
まったく、自覚がないのも困りものだ。
…いや、今はそんなことは後回しだ。
それだけ榊君から得た情報は聞き捨てならないものだった。
彼女が、暴行されている。
しかも女子に…。
正直なところ、薄々は感じていた。
今、SOS団の男女比は彼女と、男子4名というはたから見れば不自然なものだ。
それに、僕も含めた男子4名というのは…。
…あくまで客観視した結果で見ても女子の目を引く、そういった集団だ。
その中で、たった一人女子がいて
全員…やはり僕も含め…彼女を少なからず想っている。
少なくとも僕にはそう見えている。
皆想いを口にしているわけではない。
だが分かってしまうのだろう。
彼女に女生徒の嫉妬が集まるのは、自然なことなのかもしれない。
(自分で言うのもなんだと思ってはいるが、今はそれはスルーしておこう)
それを彼女が隠すのは……。
聞くまでもない、と思った。
そして少なからず怒りがこみ上げてくる。
彼女は僕たちに心配させたくなかったんだろう。
と。
「…自己満足ですね…。」
ぼそり、と口を開いた。
####
「…。」
「…。」
「…。」
「…;;;」
「…おや、どうされました?」
その日SOS団団室、正確には文芸部室に行くと、
すでに僕以外の4人は集まっていた。
しかし見事に誰も声を発していない。
涼宮ハルヒコとキョン君はむっつりと。
長門有希はいつもどおりに。
朝比奈みつるは声も出せないといった風情だった。
…今日の出勤はどうやら確定なようだ。
〜♪〜♪
…早いな…。
できれば今日中にキョン君に言いたいことがあったのに。
「…古泉…。」
「なんだよ、来たばっかなのに帰るのか?古泉くん。」
「ええ…大変申し訳ありませんが。」
そういって僕は軽く手を挙げると、部室を後にした。
「気をつけて行けよ。」
と、小さく響いた彼女の声をしっかり耳に入れて。
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僕は、どうすれば彼女の気持ちを傷つけずに守れることができるだろう。
そのことばかり、考えていた。
だってそうだろう。
こんなことのために彼女は彼女になったわけじゃない。
それだけは、確かなはずだから。
To be Continued…
気分が乗っていたのでここから新作、キョン子総受け小説です。
今回は古泉君視点。ここにきてようやく話の大筋が決まりました(おいこら)。
とりあえず古泉は榊君をいじめ倒した後出動。
さて次は彼の視点です。
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