強く儚い者たち
そして試合は0−3のまま7回裏の攻撃となる。
18
信じさせて欲しい。
天国の声の裏にある叫びを、屑桐はただ無言で受け止めていた。
華武高校の攻撃は残す所1回。
(…そろそろか。)
天国は再び華武のベンチまで来る。
1軍登板の決定権を持つ監督の下に。
「おいアンタ状況分かってんな?!
テメー自慢の2軍はまだ1点も入れてねーんだぞ!」
「口の減らぬ童子よの。
華武に敗北の2文字は無き故。」
そう落ち着いて返す菖蒲の視線の先には、屑桐の女房役がいた。
レギュラーキャッチャーの桜花である。
(出番か。)
そう思い、腰を上げようとする。
すると、次の瞬間。
(…っ!)
桜花は、天国の頭を持ち上げ、グラウンドに叩きつける。
「あ…兄ちゃん!!」
「猿野くん!!」
(天国!)
屑桐は菖蒲監督と桜花が話しているのを尻目に天国に視線を集中させた。
桜花の怪力は、屑桐自身良く分かっていたからだ。
しかし、天国は気絶しているようだったが・・・、どうやら間もなく眼を覚ましたようだ。
屑桐は誰にも気づかれないほど小さく安堵の息を吐く。
(……。)
屑桐はゆっくりと天国から視線をはずし、グラウンドへ向かう。
「お、屑の字。わしのミットどこじゃったかの〜?」
「…ここだ。」
バシッ
「な…何すんじゃい屑!!」
「すまん、手が滑った。」
屑桐はさらりと言うと、マウンドへ向かっていった。
「…今のっで…。」
「だいぶ本気だった気…。(・−・;)」
「…かなり本気でミット桜花さんの顔に叩きつけてましたね…。」
密かな敵討ちを遂げて。
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そして、試合は戻り7回裏。
7番、辰羅川がバッターボックスへと向かった。
「いけ〜モミ〜!恐れるな!!
オレがあん時対決した限りじゃ二級目で当てられたぜ!」
天国の声は屑桐の耳にも入ってきた。
(…見ていろ、天国。)
これが、今のオレだ。
「!!!」
ドゴォッ
「こ…これが全国レベル…。」
「こんな世界があったのかよ。」
十二支の仲間が(牛尾以外は)初めてみる屑桐の球に呆然としていた。
その中で天国は一人背筋に感じる想いを噛み締めていた。
(無涯の野球…見るの…あの時以来だ…。)
それは明美と一緒に中学の時練習試合を見に行った時のこと
『あ、ほら無涯いたわよ。』
『うわあ、やっぱりすごいな、速い!!』
『よね。あいつも来年は高校だし、甲子園行くんじゃない?』
そんな、明美の何気ない言葉に。
『無涯なら行けるよ!絶対!』
何気なく言葉を返した、あの日を。
『無涯はすごいんだから!』
(スゲーよ…無涯…。)
あの時のまま…いや、あの時よりずっと。
その瞳は真摯で。
誰よりも強い。
それは野球だけに集中してきた彼の3年を物語っていた。
野球に向かう事しかできなかった3年を。
天国にはそこまで考えは及ばなかったが。
6人の仲間が3振する間、天国は屑桐から視線をはずす事ができなかった。
それに気づいていたのは、天国自身と、屑桐と。
そして。
To be Continued…
私的にかなり早くあがりました、18話目です。
なんだかんだで20話が近くなってきました…。1話1話は結構短いんですけど。
18話にもなると…流石に長いかも。
毎度ですが、こんな捏造しまくりですみません。
自分の妄想を原作の進行に絡ませるとどーもややこしいんで、屑桐くんと天国以外の心理描写とか
セリフはほとんど抜けてしまうんですよね。
っていうか収拾が本気でつかなくなってしまう。(苦笑)
そんなわけで屑猿連載18話目。
読んでくださって本当にありがとうございます!!
ミスフル10巻、買いました。
座談会…華武猿…?(爆)
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