強く儚い者たち


 



「実は次の練習試合は この華武高校となんだがな。」


瞬間彼の手が震えた事に

気づいたのは二人だった。




天国は華武高校との対戦が決まったあとも、変わらずに牛尾家での練習を続けていた。

そして、守備練習を終えた後も牛尾と共にトンボによる素振りを行い、毎日深夜までの練習を一心不乱に続けていた。


「今日はここまで。」
「…はい!」

屑桐と会った日、天国は自分を痛めつけるように練習をしていたが、その翌日からは故意に無理をしすぎる事もなく練習を行っていた。
まるであの日の動揺はなかったかのように。


牛尾の目には、天国のいつもと変わらないように見えるその様子が、かえって不自然なように思われてならなかった。


しかし、天国に問いただすこともできない。
彼はあの日はっきりと拒絶していたのだから。



牛尾は、帰り支度を済ませ帰りの車に乗り込んでいく天国の姿を、ただ見送るしか出来なかった。



「猿野くん…僕にできることは何もないのかな・・・。」

その呟きは、誰の耳にも届く事はなかったけれど。





天国は帰宅し、自分の部屋に倒れこんだ。
連日の厳しい練習で身体はとっくに悲鳴を上げている。


それでも、すぐには眠れなかった。



(無涯と…試合すんのか…。嘘みたいだな…。あの無涯と…。)

天国は、屑桐の現在の野球の実力を全て知っているわけではない。
だが、幼い頃から野球に打ち込んできた屑桐を知っている。

それだけでも、今の天国には十分だった。


天国は、ふと顔を横に向けると、棚の上の写真立てだ目に入った。
そこには天国と、もう一人。
天国とそっくりな少女の姿が映っていた。


「姉さん…明美…。」


「あいつにはもう会えないって…会っちゃいけないってずっと思ってたのに…。」



なのに…!!




なら

どうしてオレは

あいつと同じ野球部に入ったのだろう?




############



「とのことで、次回の練習試合は十二支高校とあいなった。」


「……!!」
「え〜あの時のナマイキ気な奴らの高校?(>0<;)」
「めんどくさいングけど、おれ達が出るまでもないングよ。」

華武高校でも、十二支との練習試合を行う事が発表された。
最も、自分たち一軍は最初から出ないことになることも聞かされていた。

しかし、試合の事は今の屑桐には関係なかった。


十二支高校が来る。
天国に…会える。


それは、屑桐に複雑な思いをもたらしていた。




その日の帰り道。

屑桐は、一人の少女に声をかけられた。





「屑桐先輩。…お久しぶりです。」

「豊川…美亜…?」



屑桐が呟いたのは天国の恋人だった少女の名前だった。


                                            To be continued…

み…短いっっ!!
久しぶりの更新だってのになんつーか・・・。

さてさて、またまた登場しました、オリキャラ、豊川嬢。
考えてるうちに彼女が動き出してしまいました。
一回だけの登場の予定だったのですが…また変更。
ええんかいな、こんなんで。(溜息)
いっそこのポジションに柿枝さんか栗尾さんを入れとけばよかった…と思ったりしてます。
オリキャラを許せない方、この次は見ないほうがいいかも・・・!!

ここまで読んでくださった方、ほんとうにありがとうございました!!
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