指輪




コトン

「あ。猿野くん、何か落とし…。」
「ん?」

着替え中の天国の服から、何か落ちてきた。
子津はそれを拾い上げると、目に入った者に驚く。


それは古びた小さな指輪だった。


「ああ、サンキュ。」

「…これ…。指輪…っすか?」
恐る恐る質問する。


「ああ、それは。
 …死んだアタイの旦那が肌身離さず持ってけって…。」
「ええっ??!!既婚?!
 って、アンタ嫁っすか?!」

瞬時に明美化した天国に、ついつい乗らされる子津だったが。
さすがにこの小道具を捨て置くわけにはいかなかった。


「とっ、とにかく冗談はこれくらいにして、
 どうしたんすか?これ。」

「ははっ、悪い悪い。
 これな…んー…まあ子津には話してもいっか。」
「え。は、はい。」
天国の言葉にどきりとしつつ次の言葉を待った。


「これさ、兄貴がちっさいころくれたんだ。
 『だいじなやつにあげるんだって、とりあえずおまえにやる』ってさ。
 意味も知らないで、結構なマセガキだったんだよなー。」

「お兄さん…って、あの、雉子村…。」

子津の脳裏に、あの天才とも言うべきピッチャーの姿がよぎった。
近くで見てはいなかったので顔はあまり思い出せないが。

天国に似ていると聞いた。


「そう、想像つかねーだろ。
 オレももう信じられんくらいだからな。」

「でも、それを…どうして、今も?」

少なからず穏やかではない気持ちになりながら、子津はまた聞いた。
天国は少し自嘲するように。

どこかさびしそうに笑った気がした。


「ああ、だって「とりあえず」ってあいつ言ってたから。
 『次に大事な奴ができたらそいつにやるから』ってな。

 だからこれは、あずかりもんなんだよ。」


「……そう、っすか…。」


子津は、胸が痛むのを感じた。


……彼の心が繋がれているのに気づいたから。


まだ心はきっと過去に居るから。



指輪はまだ今も 強く主張を繰り返してる。



「おれものだ」と。



                      To be Continued…




久方ぶりのミスフルです。
うーん、子猿の予定がだいぶ変わりましたね。
指輪はちょっと拘束の象徴?みたいな雰囲気で。

最後がたがたですみません;;リハビリですね…。



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