もしも啓太が女の子だったら!!
海野聡編
BL学園総出で行われたMVP戦が終わって数日。
生物教師、海野聡はなんだか落ち着かない日々を送っていた。
原因は解っていた。
この学園に珍しく来た転入生の伊藤啓太である。
彼は初めて会ってからずっと海野に懐いて来てくれ、優しく接してくれた。
そして共にMVP戦を勝ち抜き、それをきっかけにとても仲良くしてくれた。
そんな啓太を海野は生徒を思う教師としてではなく、
恋する相手として見始めていた。
だが、相手は生徒で、何より自分と同じ男である。
その事実が、海野の気持ちを抑制させていたのだが。
同校生物教師、木田が海野のデータを奪おうと啓太にも暴力をはたらきかけたあの時。
啓太の身体が海野に倒れ込み。
海野は男子にありえない啓太の身体の柔らかさに気付いた。
伊藤啓太は少女だったのだ。
それ以来、海野は大きなブレーキを失ったかのように、
啓太にたいして湧き上がる気持ちに一喜一憂を繰り返していた。
そして、今日も会計部のメンバーの七条と共に手伝いに来た啓太に会えた事を、
信じられない程喜んでいる自分に驚いていた。
しかし。
「七条さん、次はこちらの書類でよかったですか?」
「ええ、ありがとう。伊藤くん。」
いつも通り、啓太は七条の側で書類をめくる。
そして七条は驚異的な早さで内容を打ち込んでいく。
もう何度か繰り返した手伝いに、啓太は落ち着いて作業し。
七条はそんな啓太の側でどこか上機嫌で。
海野の眼には、そんな二人がまるで恋人同士のようにうつった。
考えすぎだとは思う。
しかし、鋭い七条の事だ。
もしかしたら既に啓太が女性である事を知っているのかもしれない。
彼が啓太に好意を持っていることは海野にもよく分かる。
背も高くハンサム(死語)で人あたりもよく(海野にはそう見える)、
優秀で要領もいい七条と。
24歳にもなって背も啓太より低く、
研究にしか能がない夢ばかり追う自分。
もし自分が啓太なら、きっと七条を選ぶだろう。
それに、年齢も七条であれば啓太と一つ違いで…。
それでも。
「ねえ、伊藤くん。」
「はい?」
ふとかけられた海野の声に、啓太は花のような笑顔を向ける。
その笑顔に、海野は頬を赤らめる。
あまりに可愛かったから。
「う、海野先生?!どうしたんですか?!顔が真っ赤ですよ!」
啓太は海野の顔を見て風邪では、と見当違いの心配をしたようで。
急いで海野の側までよると海野の額に柔らかな掌を当てた。
そんなことをされれば。
「うわわわわわわっ!!!」
「う、うみのせんせい〜〜〜っっ?!!」
パニックを起こしている海野を見て更にパニックを起こす啓太。
「おやおや。」
その様子を見ていた七条は苦笑する。
(全身で奪い返されてしまいましたか。)
天然な二人は七条になだめられるまでじたばたと動いていた。
海野が啓太に給料3か月分の指輪を渡すのは、この3か月後の話。
END
突っ走り気味な攻め海野先生でした。
啓海らばーな方はすみません!攻な啓太くんはカッコよくて嫌いじゃないんですが、やっぱり受けが好きで…!
男性としての海野ちゃんを頑張って意識しましたがいかがなもんかなあ
次はしのみーかてっちゃんかたっきーでいきたいと思います!(連載はどーした)