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恋をしていた。
部活を終えて、通学路の歩道橋を上り。
鮮やかな夕焼けに視線を向けた。
本州で甲子園で、彼と会ったのもあの夕焼けと同じ方角で。
今は何をしてるだろう?
まだ練習中かもしれない。
時々は…一回戦で戦った自分達を思い出してくれているだろうか?
自分の事を、覚えてくれているだろうか?
「どうしただ?白糠。」
「いや、何でもね。」
友人の長万部が聞いて来るが、言えるわけない。
あいつが忘れられないなんて。
〜♪
「ん?おめーのか?」
「あ。電話だべな。」
少し驚く。
北海道の野性の代名詞のようなこいつが、携帯を持っていたのだから。
だが、次に聞こえてきた声にもっと驚いた。
「お〜、猿野かい。
電話待っとったべよ。」
「猿野?!」
耳を疑う。
何故この男が…猿野を。
自分の忘れられない相手からの電話を受け取るのか。
「長万部…おめ、猿野から…?」
「ん、おおちょっと待つべ。」
長万部は、猿野とのつながりを簡単に説明した。
長万部の話によると、猿野の家は酒屋で。
長万部の家が副業として行っている、海産店で売るつまみを猿野酒店で委託販売したいらしく。
その相談で電話をかけたらしいのだ。
「…おめ、いつのまにそんなことを…。」
「一回戦の後、猿野んとこと宴会したべ?
あん時ワシと猿野の席となりだったからな。その辺の話もだいぶしたぞ?」
「…。」
なんだか抜け駆けというか先を越されたような気分だった。
そんな話だったら…自分の所だって。
「ん、ああ。じゃあ来月あたりにいっぺんおめのお袋さんと相談させてもらうべ。
わかっただ。
ああ…それから。」
「え?」
気づくと、携帯を差し出されていた。
「おめんとこのチーズも絶品だってすすめてるべ。
おめも猿野と話せや。」
「え?」
呆然としたままで、携帯を耳に当てた。
すると。
ずっとずっと聞きたかった声が聞こえてきた。
『あ、白糠さん?ども、お久しぶりっす〜埼玉の猿野っす!』
元気で、明るくて。
まっすぐなあいつ。
「よお…元気だったべか?」
『はい!』
ずっと探してた。
君を。君に繋がる方法を。
いま、リンクした。
その瞬間
『これからよろしく!』
恋を していた。
end
帰宅時に電車で思いつきました。
相手は最初決まってなかったんですが…珍しいもの新しいものが大好きな私なので。
北海道選抜の白糠くん、決定。
長万部くんはまあよいお友達の方向で(笑)
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