街角


その日、虎鉄大河は気に入りのラップミュージシャンの新曲を買いに、街に出かけた。

久しぶりの休みで、よく晴れた。
体育会系のアウトドア派には、気分を高揚させるに十分だった。

そんな時、ふと道路の向こうの歩道に知った顔を見つけた。

(Oh、猿野じゃねーKa。)

野球部の後輩、猿野天国。
いつも明るく騒々しく、無駄に元気な男。

そんなところが、最初はあきれ果ててばかりだったが。
今は口と違い、実力をつけるための実行を惜しまない、そんな性格を知り。
気に入りの後輩、であった。


少し遠いが、声をかけようか。
そう思い、虎鉄は口を開き、腕を上げかけた。


そのとき。


「あ…?」


横にもう一人、知った顔を見つけた。

そこにいたのは…黒撰高校の、3年。
村中魁だった。


(何Da?仲良かったのか、村中サンTo…。)
街で二人で会うほどの仲かと虎鉄は不思議に思った。
それと共に、なんだか気に食わない…そんな感覚に陥る。

魁は、当然だが見慣れたユニフォーム姿ではなく
(黒撰高校のユニフォームをユニフォームと言えるのかは常々疑問であるが)
地味ではあるが、真面目な魁のイメージに似合うジャケットとジーンズをラフに着こなしていた。

それが、また決まっているのである。


そんなイケメンぶりは、多少なりとも妬みの対象にはなった。


だが、それなら天国も同じはず。
なのに隣に居る天国は。


幸せそうに笑っていたのだ。

それは、安心しきったような笑顔で。
天国のそんな表情を虎鉄は見たことがなかった。


いつも楽しそうで、でも悔しそうで。
元気で、だけど無理をしてるようで。

笑って どこかで泣いていた。


それは野球の素人でありふがいない自分を辛がっているのだと判断していた。



だけど、今は幸せそうで。


「あ…!」



すると、魁の手が天国の肩を抱き寄せていた。



その手はあまりにも自然で。


(…そういうことかYo…。)



気付きたくなかった二つのことを気付かせてくれた。



#####


「魁さん?あっちに何かあったんすか?」

「いや…なんでもない。気にするな猿野殿。」

「そうですか?あ、じゃあ早く行きましょ!映画始まっちゃいますよ。」

「ああ、そうだな。」


魁は、横目に姿を消した恋人の先輩を見た。

多分彼は気付いているだろう。
我ながら、卑怯な事をしているとは思った。


だが、離すことは出来ないのだ。


どうしようもなく惹き付けられたこの愛しい存在を。


二人は再び寄り添うと、その場を去っていった。



ふと空を見ると。


いつの間にか街は赤く染まっていた。



                               end


あ〜本当に久々にミスフル更新です。
今回は基本三角関係っぽく。ただしメンバーの組み合わせは特殊ですが。

久々に初期のミスフルを読んでみると虎猿もおいしいなあvと思ったのがきっかけです。
ただ恋敵が魁さんなのは…ホントに単なる思い付きです。

三人称の文章の方が好きなんですが、一人称の方が書きやすいですねえ…。
ああ、あとがきもわけわからん…;;

いつものことですがお目汚し失礼しました。


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