おたがいさま。



「おお!奥州の餅は美味でござるな!」

「だろ。好きなだけ食えよ。お前のために準備したんだぜ?」

「政宗殿…。」

 

年も明け数日の奥州。

奥州筆頭、伊達政宗は非常にご機嫌だった。

甲斐より新年の挨拶の使者として、真田幸村が奥州を訪れていたからだ。

 

幸村が来ると知った日から政宗は幸村の好みそうな食事や衣服を取り揃えた。

 

彼の嬉しそうな笑顔が見たかったから。

 

そして当日。

使者らしく正装を見に纏う真田幸村が現れた。

 

下馬し政宗の下に案内された幸村は正しく頭をさげ奥州筆頭への礼儀をつくした。

 

そこから先は筆頭の一言で無礼講となる。

 

Officialはここまでだ。おめぇら、しっかり飲んで食って、明日からもしっかり働

いてもらうぜ!YouUnderstand?」

 

「おぉー!!」「どこまでもついて行きますぜ筆頭−−!!」

 

幸村は目の前の人々がこころひとつに団結する様を、自国に重ねて見ていた。

信玄公…あまりのカリスマで人を束ねる戦国最強の漢につどう我が身も省みた。

自分は部下に激を入れることはできてもそれは背に「お館様」の存在があってこそ

だ。

自分の言葉でこのように人心をまとめることができるなど…と改めて政宗を尊敬し

た。

 

その敬いの視線に、政宗は気づくと幸村の傍に腰を下ろす。

 

「どうした、オレがあんまりHandsomeなんで見とれたか?」

「はんさむが何かは知りませぬが、政宗殿に見惚れたのは事実でござるな。」

「ぶ!!」

 

日頃の幸村に似合わぬ率直な好意の言葉に、政宗は驚く。

 

「…お前、酒飲んだか?」

「?某、酒は苦手でござる。」

 

自分が言った言葉の大胆さに気づいていないのか、幸村は特に変わった表情は見せな

い。

「…頼むぜbaby…。」

「??」

 

やはりわかっていないのか、邪気のない表情の幸村に、政宗ははあっとため息をつい

た。

 

この曲がらない真っ直ぐな気性にどれほど惹かれているか。

戦場で舞うごとく戦う勇猛な姿は、

味方であればたとえようもなく心強く、敵であれど魅せられるほどに。

そして話をすればこの乱世に稀少ともいえるほどの素直な明るさと真面目さをもつ。

 

どれほどに彼を愛しているか、きっと知りもしないだろう。

 

 

「どうなされたか?政宗殿。」

「いや…なんでもねえ。いいから食え。」

 

そう言ってずんだあんのたっぷりと乗った餅を差し出す。

「ありがとうございます!」

にっこりと嬉しげに、幸村はまた笑う。

 

この笑顔を今年も見れるように。

 

 

政宗は幸村とおなじ餅を食べながら、幸せな気分で正月を迎えたのであった。

 

 

 

END

 


キムコーさんに寄贈させていただきました、年賀小説です。
短くなりました;ついでにちょっと甘味が強くなりましたねー。
やっぱ天然幸村大好きです!

知将幸村も好きですv


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