新年そうそう




年の終わりの大晦日の晩。

劉備は義弟たちとの年越しの宴会に行く準備を整え、家から出ようとしていた。

そして玄関のドアを開けようとしたまさにその時、インターホンが鳴り響いた。

「ん?何だよ別に迎えはいらねえって…。」

ごつい見掛けに似合わず過保護な義弟が迎えに来たのかと、劉備は何の疑いもなく扉を開けた。

 

するとそこに、大幅に予想を覆した人物がそこにいた。

 

 

「そ…曹操ど…じゃねえ、理事長…?! 」

 

「何だ水臭い。別に先の呼び方でおれはかまわぬぞ?」

 

にんまりとそれは美しく嫌な笑顔を見せる目の前の人物。

それは劉備にとって世界一苦手な人物。

劉備が勤める蒼天学園の理事長、曹操だった。

 

うっかり呼びかけた名前に迫る口実を見出した曹操は嬉々として劉備に接近する。

その様子に危機感を覚えた劉備は、あわてて話題を変えることにした。

 

「そそそ、それより何でここにいるんだよ?

 あんた年末はパーティだのなんだのあるんじゃなかったのか?!」

 

そう職員室で聞いたから安心してたのに。

しかし曹操はここにいる。

 

「ほう、おれの予定まで頭に入っていたのか。

 そんなに寂しかったのか?劉備。」

 

「め、めっそーもねえってんだよ!!」

 

曹操は必死の劉備の様子にさらに楽しげに笑うと、劉備の顎に手をかける。

まさしく接吻の体制であることは間違いない。

 

「恥ずかしがることはない。これから3が日は二人きりでいられるからな。」

「さ、三が日ぃ?!どうやってそんな時間とっちまったんだぁ?!」

「愚問だな。お前のためだからだ、劉備。」

「……っ…。」

 

非常識極まりない、相手。

だがそんな相手とはいえ絶世の美男であり、その顔で情熱的に言われると。

 

たとえ劉備の頭がどんなに拒んでいようとも、感情が一瞬ほだされる。

 

 

そして、その隙をのがす曹操ではなかった。

 

 

「ん…!」

 

覆いかぶさるように劉備の唇に口づける。

「ちょ…そ…!!」

「聞かん。」

 

さらに押し倒すように劉備の体を抱きすくめる。

 

その時。

 

 

 

「そこまでです。理事長。」

 

丁寧だが冷やかな声とともに、曹操は強い力で襟首をつかまれ、劉備から引きはがされる。

 

 

「こんのくそ理事!長兄に何しやがる!」

 

「か…関さん!益徳!」

 

 

そこにいたのは、玄関を覆いすくすほどの巨漢2名。

劉備を待ちわびていた義弟、関羽と張飛の二人だった。

 

 

 

「兄者、ご無事ですか。」

「いつまでたっても来ねえからよ、心配になってみたらこれだもんだ。

 大丈夫か?!」

「いや〜助かったぜ。すまねえな二人とも!」

 

愛する人から引きはがされた曹操は流石に憮然とする。

 

「ふん、邪魔が入ったな。

 せっかく劉備と3が日を楽しもうといろいろと用意をしたものだが。」

 

すると曹操の背後からさらに二人分の声が響いた。

「わしは承知した覚えはないぞ?孟徳。」

「あいや〜やはりここにいらしましたな〜。理事長。」

 

「…惇…荀ケもか。

 よく分かったな。」

 

新年の挨拶回りなどの仕事を丸投げしても全く悪びれない従兄弟に、夏候惇はキレた。

「分からいでか!!劉備が絡むとこうも単純になりおって!」

「理事長…とりあえず仕事はなさってくだされ。」

 

 

「…やれやれ。3か月かけた目論見が胡散霧消か。」

「くだらん目論見に3ヶ月も使うな!」

 

「劉備先生、ご迷惑おかけしてとんと申し訳ない。」

「今度はもっときつく縛り付けておいてくれよ、荀ケどん。」

「お前ももっと拒め、ふがいないぞ。」

「じゃっかあしい!」

 

 

「それは無理だな、惇。

 劉備はおれが好きだからな。」

 

にまり、と曹操は笑った。

 

 

「あんたもとっとと帰れ!!」

 

 

劉備は否定せずに、顔を真っ赤にして怒った。

そんな義兄に、義弟二人は苦笑する。

 

 

その瞬間、除夜の鐘がなりひびいた。

 

 

「劉備。今年こそ覚悟を決めろよ。」

 

 

 

「じゃっかあしい!」

 

 

 

今年もどうやら騒々しい一年になりそうだ。

 

 

 

 

                                              End



モモスケ様に送らせていただきました年賀小説です。
蒼天キャラが学園の生徒やら講師やらをしている設定なんですが…。
どちらにしても、蒼天曹操様はキャラがつかみにくいです;;難しい人だ。


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