「猿野、少し時間空いてるか?頼みたいんだが…。」

「ああ、はい。」

十二支高校の昼休み。
1年、猿野天国は担任の教諭に呼び止められた。

周りから聞いていると、詳しい内容は分からない会話だったが。

本人たちは良く分かっているようだった。

そんな様子を見ていたのは。


ラウンド0.5


「よっ荷物もちごくろーさんだったNa。」
「へ?何のことっすかキザトラ先輩。」

部活中、2年生虎鉄大河は、猿野天国に軽く肩を組んで言った。

「いや、昼休みにセンセーに「頼む」って言われてたじゃねーKa。」
「え?ああ、見てたんすか。
 で、荷物持ちって何なんですか?」
天国は全く分からないといった顔で虎鉄の顔を覗き込んだ。

その愛らしさに少しくらくらしながらも、虎鉄は不思議に思った。

「He?だからお前が頼まれたのって荷物持ちJa…?」

「いや、別に荷物持ち頼まれてねーっすけど。
 せ〜〜んぱい。オレが頼まれるのって荷物持ちくらいだとか思ってんでしょ〜〜。」

天国は虎鉄の勘違いに気づいたらしく、にんまりと笑ってからかうような顔をした。

「何?じゃ、お前何頼まれてたんDa?」
自分がほぼ間違いないと考えていた事を違うと言われ、虎鉄はなんとなく興味がわく。

すると、天国は笑って。

「いや〜〜ん、乙女の秘密に立ち入るなんて、マリファナ先輩ったらフ・ケ・ツv」
最凶の乙女、明美に変身した。

「ってコラ!!その呼び方止めろって言ってんだRo?!」
最近から始めた少年によくないニックネームを言われ、虎鉄はそちらに反応を返した。


「…全く、虎鉄君は集中力が足りないね。」
「本当なのだ!もう少しで猿野の新しい事実が割れたかも知れないのに、詰めが甘いのだ!」
「鹿目…殺人事件じゃないんだから…。」
「まあまあ、鹿目先輩の言うことにも一理ありますよ。」
「そうだよ〜〜。虎鉄先輩、あんなに軽く流されちゃってさ。」

「けど…そんな猿野くんが何手伝ってたかなんてそんなに騒がなくても…。」
「なに言っちゃってんの子津くん!!」

「子津くん、確かに些細なことだとは思うけどね、好きな相手のことは何でも知りたいと思うのは当然だよ?」
(あなたがいうとどうしてそう紳士的な割りにストーカー臭いんすか!!)←カッコいい牛尾ファンの方すみません。
子津は口に出す事の出来ないツッコミを胸になんとかとどめる事ができたようだ。


「とりあえず、どうしますか?キャプテン。」
「そうだねえ・・・まあ手っ取り早く担当教諭に話を…。」

「だったらもっと手っ取り早く本人かオレに聞いたらどうなんですか。」

横から呆れたような声がはさまれた。
天国の隣に居る事を当たり前のように許された男、沢松である。
そして天国の公認の恋人であり、ここに居るものたちの最大のライバルである。

「…まあ確かにそうなんだけど。
 君が当然知っているのを聞くのはどうも気に食わなくてね。」
にっこりと紳士的に歯に衣着せぬ物言いをする大物、牛尾。

沢松はやれやれと苦笑しながら、言った。
「切羽詰ってそうな割りには手段を選ぶんですねえ。」

「でもまあ、この際気に食わない方の手段が寄ってきたんですから聞いても構わないんではないですか?」

辰羅川の冷静な毒に、牛尾は一息ついて改めて質問した。

「で?彼は何を手伝っていたんだい?」


「…先生のパソコンの調子が悪いから設定しなおしてたんですよ。
 あいつ一応インストラクタークラスまでなら軽いですから。」

「…!」

沢松の軽く言った言葉に、皆は驚く。

その表情に、沢松は予想通りの反応を見たらしく。
おかしげに笑った。

「やっぱ予想してなかったんすね。
 あいつあれでかなり頭いいし、授業とか真面目に受けてるから教師うけもいいんすよ?
 ただ休み時間とかはそんなの忘れさせるほどやかましいですけどね。」

続いてきた沢松の言葉に、皆は驚いた表情のまま固まった。


「あいつを先入観だけで見てちゃ、まだまだですね。」

そこまで言うと、沢松は踵を返し去っていった。


##############


固まった意識の中で。野球部のメンバーたちは思った。


彼は初めて会った時から騒がしくて。
元気で。
いつも笑って、ふざけて、芸人根性丸出しで。
努力家で、一途で、一生懸命で。

見えていた所は、それだけだった。
それだけで彼を自分の中で全てかたどっていた。
それだけで彼を知ったつもりになっていた。

それだけじゃなくて、本当は。
真面目に勉強もするし、先生の手伝いも軽く引き受けるし。
ああ、本当はもっと穏やかなのかもしれない。
きみの心の内はもっともっと知らないことでいっぱいだろう。

知らない事だらけだけど。
今知ってる君を、自分は間違いなく好きだから。

「「「「「「まだまだ諦めない(よ(ぞ(のだ(也))))」」」」」」


今はまだ、君の傍に居る男には勝てないけれど。


##############

「ま、勝負かけてくるのはこれからだろ。」
沢松は、フェンスの外から部員たちの様子を見てそう呟いた。

「どうしたんだよ?沢松…ん。」
隣にいた天国に軽く口付けて。
沢松は笑った。

「んにゃ、こっちの話。」

「あほ…///.」

そうそう負けるつもりはない。
いつだって勝ち抜いて。こいつの傍にいるのだから。



第一ラウンドはこれから。

                          end


別の意味でありがち…。ですね。やっぱり。
今回は厭世的でないメガネ猿を目指してみました。
つまり先生のこととか嫌いじゃないし、周りを警戒しているわけでもない。
頭のよさは普通以上かもしれないけど、ごく普通の高校生活に適応しているお猿。
…話がかなりつまらなくなったような…無駄な挑戦はしない方がいいようです。

秋吉様、散々お待たせした挙句こんなもんで本当に申し訳ありません!!
37000HIT申告、真に有難うございました!!

どうぞこれからもミスフル好きでいてください。
では、今日はこの辺で。
多大に遅れまして本当に申し訳ありませんでした!!

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