こいあうもの
ニ 誰かに縋ることで自分を繋ぎとめる
「Morning、幸村。」
「政宗殿。」
「雪見もいいがその薄布じゃ風邪を引くぞ。
もう一枚着とけ。」
「…はい。」
縁側から雪を眺める幸村は、政宗の姿を見ると微笑んだ。
以前のような元気な笑顔とは少し違う、不安そうで、でも優しい笑顔。
これが今の幸村だった。
####
あの日目を覚ました幸村は、自分に嫌悪の眼差しをぶつけることをしなかった。
ぶつけてきたのは、ただ不安と動揺。
幸村の中には、もう何も残っては居なかった。
『私は…一体…。
あなたは、誰ですか?
私…私の名は…?!』
幸村は頭を抱え混乱する。
それを見た政宗は戸惑いを隠せず、重臣の片倉小十郎に頼み侍医を呼んだ。
診断の結果は、精神的な要因による記憶の喪失…というものだった。
それを聞いた政宗は、幸村の元に向かった。
『幸村…。』
『…ゆき、むら…それが私の名なのですか…。
先ほどからみな、私の顔を見てそう呼ばれますが…。』
『Yes…そう、お前は幸村、だ。』
政宗は名前だけを告げた。
もう、今の彼に姓などなんの意味もない。
全てを忘れ、自分の下にいるしかないのだ。
不安の影から、黒い嗤いが顔を見せた。
########
それから長い冬の間、幸村はずっと政宗の居城に居た。
表向きは客人として。
実際は…愛人として。
二日とおかず、政宗は幸村と夜を過ごした。
そして昼は幸村に剣を教えた。
槍を持たせることはできなかった。
だが、剣を持たせた。
もし、記憶が戻ることを恐れているのなら…武術などしなければ良いのに。
そう自分でも思っていたが。
恐れながらも、やはり求めた。
あの紅蓮の炎を。
#####
「政宗様。」
「Oh、何の用だ?小十郎。」
兄のような重臣はある日問いかける。
「…真田殿の事、どうなさりたいのですか?」
「……。」
見透かされている、と政宗は思った。
どうするつもり、とは聞かなかったのだから。
傍に居て欲しい。本当はそれだけだったのに。
あの炎を求めながら、今のぬくもりも離したくない。
もう、どこにも生かせない。
「政宗殿?」
ひょこり、と幸村が顔を出した。
「…幸村…。」
小十郎はその様子を見て一つ息をつくと。
一礼をして席を外した。
それを見届けることもなく。
政宗は幸村を抱きしめた。
「政宗、どの…?」
「……幸村……。」
憎んででも生きてて欲しかった。
傍に居て欲しいとずっと思っていた。
「…政宗どの…。」
To be Continued…
半端な文章で半端な続き物です…;
でも行き当たると意外と次の展開が考え付くんですよね。
この調子で泥沼を突っ走ってみましょう!まあよくある泥沼ですが;;
戻る