オレとあいつとこいつとキミと
真紅
「け、慶次殿…!」
「あー幸村!ごめんな、松風が悪さしてなかった?」
「松風…?馬の名前でござるか?」
松風という名と知った、この馬を幸村は改めて見る。
なるほど、予想はしていたが慶次の巨体に見合う堂々とした体躯だ。
それに。
「良い名でござるな…。」
松林に打ちつける浦の風のごとく走り抜けるのだろうか。
「だろ?幸村なら乗せてあげてもいいよ?
オレと一緒に!」
「二人なら結構でござる。」
けんもほろろに切り捨てられる。
慶次はいじけた振りをしつつ。
松風を感嘆の目で見つめる幸村の表情を垣間見た。
(…やっぱり可愛い顔してるよな…。)
最初の出会いが出会いだっただけに、自分に良い顔をしてはくれない幸村であるが。
こうやって動物と素直に相対する表情を見ていると
幸村が本来素直で人の良い、まっすぐな人物であることが分かる。
むしろ愚直なほどにまっすぐなゆえに慶次に対する態度が今だ硬化したままなのだろうが。
そしてその性格に、日の本一の士とすら呼ばれる抜きん出た武力。
更に際立った容姿は少年から青年へと変わる過程を華のように魅せる。
(これだと女が放っとかないだろうに。)
恋心のみならず母性本能もくすぐり保護欲もかきたて頼りがいもある。
なのに、本人は免疫なしとくるのだから神仏のやることは面白い。
そして、更に面白いことに。
「惚れちゃったしね…オレも。」
ひとしきり苦笑すると、慶次はいじけたふりを止めて。
本来の目的を果たすことにした。
「慶次殿?」
「なあ幸村。」
慶次は幸村の前にまっすぐ立つと。
にっこり笑った。
そして有無を言わせず抱き寄せると。
「好きだ。本気だよ。」
単刀直入。
先手必勝。
愛を告白した。
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「は、破廉恥でござるーーーーーーーーーっっっっ!!」
「はは…やっぱりね。」
苦笑しながら慶次がさする頬は、真っ赤に腫れ上がっていた。
原因は既に遠く。
いつものように、いつも以上に真っ赤になって走って行ってしまった。
「長期戦必至?みたいな感じだよな。」
それでも慶次はくすくすと楽しそうに笑った。
あまりにもらしくて、可愛くて。
やはり好きだな、と実感する。
松風は何があったのかと問うように鼻を鳴らして慶次に顔を寄せた。
「松風、喜べよ。お前も大好きな幸村にこれからもたっぷり会えるからな。」
その言葉に、少しだけ嬉しそうに見えたのは。
慶次だけではなかったかもしれない。
さて、真紅の君を落とせるのはいつのことやら。
end
うーん、今までで一番幸村らしい幸村だったかもしれません。
話の内容は両方でほとんど変えては居ないのですが…。
皆様はどちらの幸村がお好みでしょうか?
まあどちらも似たり寄ったり…かな。
ではでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!
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