フェンス外の戦争
『入った〜〜〜大会旗を叩き追った〜〜〜!!!
場外ツーランホームラン!!4−5!!!』
「ザマぁ見やがれ武軍共め
今さら泣いて詫び入れたって絶対許さねぇからな。」
十二支ー武軍装線6回表。
代打一年、猿野天国は初公式戦・初打席にて場外ホームランというとんでもないデビューを飾った。
その姿はあまりにも雄雄しく美しく…
「可愛いわ、あの子。」
見に来ていた埼玉強豪の一校、セブンブリッジ学院の面々をも魅了していた。
一番最初に反応したのは紅印である。
その時、天国はセブンブリッジ学院の面々のいる方向に視線をやった。
天国は不敵な笑みを一瞬浮かべるとすぐに視線を戻す。
視線の先は、鳥居剣菱。
ごく最近天国自身がライバル宣言をした相手である。
…が。
「あら…?今代打のコこっち向いたわよね。
剣ちゃん…?もしかして〜さっき言ってた例の彼って…。」
「…さぁね…。」
剣菱ははっきりとした答えを返さなかった。
今は、言おうとは思わなかっただけ…。
だったのだが。
「そう?じゃあやっぱりアタシの視線に気づいてくれてたのね?」
「は?!」
いきなりとんでもない結論をはじき出してくれた紅印に、剣菱は驚いて視線をやる。
すると。
「も〜可愛いコねえ!試合が終わったら早速…。」
「ちょ、ちょっと待った!!てんごく君が見てたのは俺の方…。」
「やっぱりあのコなんじゃない。」
ひっかかった。
今のは非常に単純な紅印の誘導尋問だったのだ。
「あ〜。もう、紅印にはかなわないな〜。」
剣菱は必死で平静を装ってにっこりと笑った。
内心はというと舌打ちしまくっていたが。
紅印の方はというと、こちらもにっこり笑って剣菱ににじり寄って行った。
「ねえ剣ちゃ〜〜んv」
「あ、てんごく君の住所 氏名 年齢 電話番号 誕生日 身長 体重 血液型etcは
知ってるけど教えないよ〜v」
「……。」
「あれ?剣菱に紅印、どしたネ?」
「…。」
ジュースを買いに行っていたワンタンが戻った時、目の前には砂埃を巻き上げてどすんばたんと古い効果音つきの喧嘩している二人の姿があった。
蜘蛛柄の袖とバンダナの少年は黙して語らなかった。
「あ、今剣菱なにか落としたアル。」
喧嘩の最中に、剣菱のポケットからなにかもメモ帳が落ちてきた。
ワンタンはそれを拾うと中を確認する。
「ワンタン 何?」
「なになに?『猿野天国 15歳 7月25日生まれ O型 174cm 60kg…』
あー、これあの可愛い代打くんの研究メモネ!
いいもの拾ったアル〜v」
「ワンタン 拝見 所望。」
「あ〜〜〜!!ワンタン、それはオレのてんごく君観察・らぶらぶメモ・モンモンちゃん〜〜!!」
どういうネーミングセンスしているんだとかそれ以前にメモ帳に名前つけるなよとか突っ込みどころは満載であるが
とりあえずワンタンが自分の宝物を手に取っているのに気づいた剣菱は紅印とのケンカを一方的に中断してワンタンのメモを奪い取った。
「あー、剣菱何するネ!!」
「それはこっちのセリフだよ〜〜?第一これはオレのじゃん〜。」
「拾った人にはお礼1割ネ!」
「剣ちゃん、それをお見せなさい!!」
紅印も早急に立ち直ると、参戦する。
「…俺 拝見 所望…。」
そんなわけで次は4人で(もう一人も居るが)全面戦争突入か?と思った時。
「こんなところで暴力沙汰とは、セブンブリッジの教育はなっていないようだな。」
突然聞いた事のある、だがここでは聞くはずもないであろう声が耳に入る。
「あ〜〜!」
「あらあら、華武のハンサムさんたちじゃないの。」
「あ〜セブンブリッジのオカマじゃん。(>▽<)b」
「なんですって〜〜この電波黒ガキ!!」
早速いさかいを始める某お二方。
そんな二人を尻目に、華武の最凶1年、御柳はいさかいの原因であるメモ帳に気づく。
「何、これ天国の個人データじゃん。」
「ちょっと君、何故あの代打君を知ってるネ?
しかも呼び捨てで!!」
「え〜だって、俺天国の恋人だし。」
「嘘をつけウソを!!」
「そうだよ〜〜てんごく君はオレに夢中だし〜〜。」
ひょうひょうととんでもない事を言う御柳に屑桐は速攻で釘をさす。
すると次には剣菱が同様に爆弾を放り投げる。
「フハハハ、鳥居剣菱!貴様こそ夢を見ているのではないか?
第一貴様は猿ガキと面識もないであろう!」
「いや〜〜あるよ?ライバル宣言もされちゃったし〜〜v」
「何だと?」
どうやら屑桐はかなり動転していて十二支の試合に無関係なはずのセブンブリッジがここに来ている事に対する意味をあまり考えては居なかったようだ。
「なんだよ。こんなのよりオレのデータの方がよっぽど詳し気じゃん。(>0<)」
「なんですって〜〜?ちょっとお見せなさい!」
「い〜や気v」
「所望…。」
「おめぇらは部外者だから見せないング〜〜。」
「ちょっと白春!お前にも見せる許可はしてない気!!
あ、こらミヤも覗くな〜〜!!」
「いーじゃねーすか、減るもんじゃなし。」
「いや!!お前らが見ると減る気がする気!(・−・;)」
「吸い取り紙っすか俺らは…。」
そんなこんなで両者とも一歩もひかず、混戦を続けていた。
すると。
「あ、これ間違ってますね。あいつの身長は正確には174.4cmですよ。最近筋肉もついてますから体重も60.7kgと少し上がってます。
それからペーパーテスト苦手とか言ってますけど数学得意ですよ。理系だし。
あと現時点で恋人ナシってのもウソです。
ホントはなが〜い付き合いの恋人がいますよ?」
剣菱のメモにも朱牡丹のデータにもない事象をあっさりと口にした男が居た。
「な…誰だ貴様は!!」
「あれ〜君は確か沢松、くんだっけ?」
剣菱は妹の凪から確か天国の親友であると聞いている。
なるほど、彼なら一番付き合いの長い分、もしかすれば天国の両親や天国自身よりも天国のことをよく知っているかもしれない。
「はい、華武のみなさんもセブンブリッジのみなさんにもほとんど初めましてっすね。」
「君も今日てんごく君の応援に?」
「ええ。あいつの初公式戦ですし。」
「そうか。貴様は猿ガキの親友か…。」
屑桐もどうやら沢松の事をなんとなく思い出したらしい。
虎鉄の打席の時フェンス裏で天国と話していたことに思い至ったのだ。
「ところで、君はどうしてここに?」
「いえ、皆さん何か勘違いしているようでしたので、釘を刺しに。」
沢松は一見地味だがかなり整った顔立ちに不敵な笑みを浮かべた。
「勘違い?」
そこにいる全員が沢松に集中した。
その時。
『おら〜〜沢松〜〜見たかオレのホームラン!!』
そこにいる全員の愛しの君、猿野天国の声が響いた。
「「「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」」」
沢松の携帯だ。
どうやら通話にしていたらしい。
だがそのまま聞こえるほどよく響いた。
「おう、見てたぞ。」
『どうだ!惚れ直したか?!』
「何言ってんだ。お前が本気で怒ったらこれっくら簡単だろ?」
『…ああ、ったりめーよ!』
「ま、まだまだこれからだぞ。頑張れよ天国。
愛してんぜ?」
『…オレもだよ、バカ。』
ガーーーーーーーーーーーーーーン
沢松は一通り話すと携帯を切った。
そして放心状態の全員に言った。
「天国はオレのですんで。勝手な事言わないでクダサイね。」
どうやら。
彼らの言い争いは、沢松氏の逆鱗に少なからず触れていたようである。
その後、強豪2校に猿野天国奪取作戦遂行委員会とかいう集まりができたとかできなかったとか。
それはまた別の話。
END
maI様よりいただきました2000hit代理リクエストです。
なんともまあありがちなパターンの話になってしまい、やっぱりまとまりがつかず大変申し訳ありませんでした!!
天国が多くの人間に愛されるのはすごく好きなんですが、多人数を動かすには全く文才が足りず…。ジレンマに陥ってます。(んな大層なことでもないですけど)
結局十二支は不参加となりました。
maiさまの不参加でも構わないと言う優しいお言葉に甘えさせていただきました。この件も重ねてお詫びいたします。
結果としては沢猿前提の(七橋+華武)×猿ということで。お許しいただければ幸いです。
mai様、素敵なリクエスト本当にありがとうございました!!
またお越し頂けると嬉しいです!!
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