東京の少年、ケン一はある日幼い頃の親友に再会した。
彼の名は服部貫蔵。
伊賀の忍者であった。
ハットリとケン一はケン一の通う中学校で再会を果たし、周囲のどよめきを後目に帰途についていた。途中まで一緒だった夢子は別の方向に帰っていった。
今はハットリとケン一が二人で歩いている。
180cm以上はあるであろうハットリに比べ、ケン一の身長は四捨五入してやっと160に届く、といったものである。中学二年生としては小柄で、華奢と言ってもいい体格だった。
ハットリは長身にくわえ鍛えられたしなやかな体つきで、優美な黒豹、と言ったイメージである。
二人が並んでいる姿は、他人がみれば兄と弟という雰囲気を出していた。
「そっかー。ハットリ君、一人前として認められたんだね。すごいじゃないか。」
「いやー、父上の寛容さも入っているでござるよ。拙者はまだまだ修行が必要な段階でござる。」
ハットリとケン一はとりとめのない話をしながら家路をたどっている。
ハットリはケン一が自分が一人前になったことに純粋な感嘆を示してくれることに大きな喜びを感じた。
ふと気付くと、ケン一が自分の顔をじっとのぞき込んでいることにハットリは気付いた。
ハットリは自分の中で自覚したばかりの想いが暴れ出すのを感じていた。
「あの、なんでござるか?ケン一氏。」
「ううん、ホントにハットリ君だなって思って。でもホント背伸びたよねハットリ君・・・。雰囲気も全然変わっちゃったし。」
「・・・ケン一氏も変わったでござるよ・・・。」
大きくなった
綺麗になった
可愛くなった
― 愛おしくなった ―
「それにしても羨ましいよ。すっごく背が高くなって、綺麗でかっこいいしさ。僕なんかあんまり背が伸びないし童顔だからまだ小学生にみられることあるんだもん。ホントにキミと同い年かなって思うよ。」
「ケン一氏はそのままで十分可愛いでござるよ・・・。」
ケン一の可愛い姿を見てふと本音を漏らす。
ケン一はハットリの言葉に驚いたように瞳を開ける。
ハットリは本音を漏らしたことを後悔した。
(しまった。つい・・・。ケン一氏に拙者の不埒な想いを気付かれては・・・。)
慌てつつもそこは流石忍者。
表情にはほとんど現れていなかった。
ケン一はつかつかとハットリに歩み寄ると、ハットリの顔を至近距離から見上げた。
(け、ケン一氏・・・そのように近寄られては・・・)
「あのね、ハットリ君。」
「は?」
「男が可愛いって言われて喜ぶわけないでしょ?もう少し良い誉め言葉言って欲しかったなー。」
かわいらしくむくれた顔で文句を言う。ケン一はどうやら「可愛い」という言葉自体が気に入らなかったようで、言葉の意味を問題にしてはいないようだ。
(・・・ほ)
「まあいっか。ところでハットリ君。また家で暮らしてくれるの?」
「・・・いや、それは・・・。」
出来たらそうしたいが、それは少し図々しいのではないか。なによりケン一の側にずっといては自分がケン一に対して責任がとれないことも・・・。
そんな気持ちがハットリの中にはあった。
「何言ってるの!僕とキミの仲じゃない!また一緒に暮らそうよ。パパもママも喜ぶよ!」
「あの、でももう屋根裏の部屋は拙者のサイズには少々きつく・・・。(本当は結構スペースがあるが)」
「えー?だったら僕の部屋で一緒に寝ればいいじゃない!」
一緒に? 寝る? ケン一氏の部屋で? ケン一氏と?
(・・・・・・・・。)
ということは。
(△%▼※○★∂$÷+♀×〇■〜〜〜〜〜??!!??!!!!)
ハットリがケン一の言葉の意味に気付くまで10秒の時間を有した。
「ハットリ君・・・。」
するりとパジャマを肩からおろすとケン一の華奢な身体となめらかな肌が現れる。
「ケン一氏・・・。」
ハットリはケン一の柔らかな髪に指を愛おしそうに絡めるとそのまま首筋に手を伸ばしケン一の顔を引き寄せゆっくりと唇を重ねた。
「ん・・・ぅ・・・ん・・・。」
何度か触れるだけのキスを繰り返し、ケン一の濡れた唇が誘うように開き出すのを見計らってハットリは舌を差し入れた。
ケン一の口内は緩やかに開き・・・ケン一の柔らかな舌を見つけだすと自分の舌を熱く絡めた。
「んむ・・・んんっ・・・・。」
ケン一の口腔を十分に犯し、ハットリはケン一の胸にある紅い蕾を指で弄びながら唇をケン一の首筋よせ・・・
耳元で囁く。
「愛してる・・・」
熱に浮かされたようにほんのりと頬を染め朦朧としたケン一の表情。
うっとりとこう答える。
「僕も・・・。だからもっと抱きしめて、ハットリ君・・・。」
※以上ハットリの妄想
(〜〜〜〜〜〜!!!!!)
「あの、どしたの?ハットリ君・・・ι」
ケン一の戸惑った声に我に返るハットリ。
「いいいいいいや、何でもないでござる!」
(せ、拙者はなんてことをーっ)←ぱにっく
「?瞑想してたの?」
「そ、そんなところでござるよ。」
瞑想でなく妄想だが。
「ふーん?まあいいけど、さっきの話OKでいい?」
「え・・・?」
「ほら、僕の部屋で寝泊まりするってこと!それでないと家に入れない!!いいね?」
「ちょ、ケン一氏・・・!」
「ダメ。ハットリ君は家の僕の部屋で寝泊まりするの!!決まり!」
久しぶりにあったケン一は、随分強引な性格に育ったようだ。
「よし、さっそく家に帰ろ!」
ハットリの腕をとると、ケン一は足早に再び帰途についた。
(拙者・・・大丈夫だろうか・・・。)
ハットリの心配をよそに、再び勝手に決められた同居。
貞操の危機が迫っていることに、ケン一は全く気付かず事態は進んでいくのであった。
「兄上にケンちゃん、みっけ!」