(ダメだ、サル!! 行くんじゃ…)


「行くんじゃ、ねえ…。」



ことのは




「ん…。」

見慣れた天井。
(そうか…。戻ってきたんだったな。)


天回との戦を終え、尾張に戻ってきた信長。
広い寝室にて、一人事実を噛み締めていた。


「ったく、未練がましい…。」


がりがりと頭をかきむしりながら、ゆっくりと身を起こす。
戸を開けると、尾張の朝日が信長を照らしていた。


「……。」


朝日に照らされて思い浮かべたのは。
これからの天下統一事業ではなく。

『おっせーんだよこのサル!!今何時と思ってやがる!!』
『すっすいませんーんっ!!ついぼーっと朝日を…。』

『朝日だぁ?』
『ははははいっ!!な、なんかきれーだなあって・・・』




「…認めてやるよ。クソ。」

朝日は、美しかった。
それは喪失感を抱える信長に、静かに染み入って。



「んなにきれーなおてんとなんざ、見たことねーよ。」
それはどこか怖いくらいに…。



『悲しい事があると、不思議と景色が綺麗に見えませんか?』
『?何…。』

『こわい、くらいに。』

そう言っていつか涙を浮かべていたあいつ。
次の日、あいつの友達が死んでいたと聞いた。



「バカヤロー。」

思い出すのは、行ってしまったばかりのあいつのこと。


全部自分に背負わせて。
背負っている事を思い知らせて。


お前は、行ってしまった。



このことのはを置いて。







「行くんじゃねぇよ…。」




今はもう届かない。




                                    end.


え〜い、数年前に書いて今回発掘した激短い文章です…。
しかもミスタージパング。
連載中も今も密やかに大好きな作品です。
日吉君がかわいい!!総受まちがいなしですね!
で、当時久しぶりに読んでて、あのお別れシーン。
行くんじゃねえって言いたかったけど言えなかった、言う事を自分にさえも許せなかった。
で、突発的に書いちゃったしろものです。

…相変わらず内容はないですけど・・・。

読んで下さった奇特な方、ほんとうにありがとうございます!!
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