Relations with no name
 
 「へー、卍高校で屑さんに?」
 「あぁ、けっこー面白かったv」
 「だろーな。会いに行くか?」
 
 「やめとこ。絶対怒ってるし。」
 「お前…なにやったんだ?」
 
 「他人のフリ。」
 
 「…そら怒るわ。」
 
 
 〜♪〜〜♪〜
 
 着信を見ると明らかに噂の主からの電話。
 「・・・・・・。」
 「出とけ。後が怖いぞ?」
 
 
 観念して通話ボタンを押す。
 「…はい。」
 
 
 
 「天国!!!貴様どういうつもりだ!!!」
  
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 十二支高校野球部のメンバーがその日集まったのは、中間テスト前の勉強会のためであった。
 十二支高は文武両道を目指しており、勉強時間が確実に少なくなる運動部にもある程度の点数を求めていた。
 つまりは、赤点3つで補習である。
 
 そのような汚名をかぶるのは負けず嫌いだらけの十二支メンバーには不本意そのもので。
 でも一人だと進まない問題も出てくる。
 結果、お互いで分からないところを補い合おうという、オーソドックスで合理的な結論に至ったわけである。
 
 
 しかし。
 
 
 「猿野くんは来ないのかい?」
 そう。十二支野球部の(各々の)心の恋人、猿野天国が来ていないのだ。
 
 今回の勉強会、自分たちの勉強も勿論だが、それぞれにある下心を秘めていた。
 つまり、最も勉強の必要そうな(つまり頭の悪そうな)天国と頭を突き合わせて勉強をし、分からないところはちょっと接近したりして教えてあげたり。
 それで少しいい雰囲気になれたらな、と。
 
 健全な男子らしい、非常に不健全な事を考えていたのである。
 
  「ちぇ〜っ兄ちゃんいないなんてつまんない〜っ。」
 「……(こくこく)。」
 「バカ猿だから逃亡したんだろ・・・プ・・・。」
 「犬飼くん、いなくて残念なら素直に言えばよろしいでしょう。」
 「何か用事が出来たって言ってたっすね・・・。」
 
 
 「仕方ないな、さ、図書館についたことだし、頑張って勉強しよう。」
 爽やかにキャプテンスマイルをふりまく牛尾だったが、内心は力一杯残念がっていた。
 (終わったら個人教授にって家に連れ込もうかと思っていたのになあ。)
 
 「牛尾。犯罪は止めておく也。」
 「…なんのことだい?」
 心を読んだのか、人外高校生蛇神…。
 
 
 
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 「だから、悪かったって言ってんだろ?」
 「うるさい。俺は傷ついた。今日はしっかりつきあってもらうぞ?」
 「眼だけで人を殺せそうな顔して…。」
 「何か言ったか?」
 「まーまー。屑さん、落ち着いて。」
 
 その頃、天国は華武高校エース、屑桐無涯と親友・沢松健吾と共に図書館より程近い街中を歩いていた。
 屑桐は普段から決してよくない機嫌を更に悪くして、常時悪い目つきをさらに悪くしていた。
 原因は冒頭の通りである。
 
 で、屑桐の機嫌を直すために今日は共に街に出る事になったのだ。
 屑桐としては天国と二人きりで来たかったところだが、天国が沢松をつれてきている以上は文句は言えない。
 たとえ今日が屑桐のための1日だったとしてもだ。
 
 2年前に知り合った屑桐と二人の関係は微妙なものだった。
 
 最も、3人はこの関係にそれほど不満を感じてはいないが。
 
 
 
 そんなこんなで3人は図書館の前にやってきた。
 「あ、ちょっとまって。見たい本入ってっかもしんねーから。よってこ。」
 「ん?ああ、「ボスマンの黙示」か?」
 「そーそ、けっこ非科学的でおもしれーの。」
 
 「・・・・・・・。」
 
 
 
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 「兄ちゃん!!??」
 「え?よぉ、スバガキじゃん!」
 
 図書館に入って本棚を探していると、聞きなれた声をかけられた。
 兎丸である。
 
 
 「え?猿野くん?」
 「猿野ではないか。」
 「バカ猿…。」
 「猿野くんじゃないっすか。」
 「いらしてたんですか。猿野くん。」
 「……!」
 「なんだYO、きてたのKA?」
 「会えてよかったばい。」
 「猿野、結局来ていたのだ?」
 「があぁあ?」
 
 兎丸の声を聞きつけて、他の十二支高の面々がぞろぞろとやってきた。
 レギュラーはほぼ全員そろっているようだ。
 
 「あー!今日の勉強会ここでやってたんすか。」
 「そうだよ?君も来たんじゃないのかい?」
 
 諦めかけていた夢が目の前に。
 ほぼ全員がそんな事を同時に思った。
 
 
 ところが。
 
 
 「天国。何をしている。」
 
 「あ、無涯。」
 
 
 「…屑桐?」
 愛しい存在の後ろから、予想外の姿が現れる。
 しかも聞き捨てならない呼び方をして。
 
 
 「牛尾、それに…十二支の奴らか。」
 「何故…君が猿野くんと?」
 牛尾は流石に驚愕の表情を見せる。
 牛尾にとっては、どうしても譲れない存在がかつてのライバルと共にいることが、信じたくないほどショックだったのだろう。
 
 「オレは、こいつとは・・・。」
 
 
 一瞬、言葉がつまる。
 こいつと、オレはいったいなんなんだろう?
 
 「あー、俺たちと屑さんて、2年前からの付き合いなんすよ。」
 口を挟んだのは沢松だった。
 
 「えーっ?!じゃあ僕たちよりずっと長いじゃん!」
 「そうなんですか?ですがこの間の卍高校では・・・。」
 「あ、あん時オレがおもしろがって他人のフリしたから。この人プライド高いからあの状況で知り合いとかいえなかったんすよ。」
 「そうだったのかい。」
 
 
 
 屑桐をさしおいて二人は自分たちの関係を説明した。
 あたりさわりなく。
 
 例えば、天国がオレとカラダの関係を持ってる事とか。
 そんな事は言わなかった。
 
 奴らは知らないのだろう。
 天国と沢松が恋人同士なことも。
 いや、もしかしたらそれ以上の絆で結ばれている事も。
 
 そして、オレがその二人の中に説明できない居場所を得ていることも。
 
 
 
 ある程度説明して、3人は他のメンバーと分かれた。
 
 一応3人の関係は友達(止まり)であるということで、十二支の面々は納得していたようだ。
 だが。
 
 釈然としないものが屑桐の中に残っていた。
 
 
 
 
 2年前のあの日。
 バカの逆恨みによる暴力に巻き込まれた屑桐を、助けてくれたのは天国と沢松だった。
 それ以来、二人は屑桐を気に入ったのか何となく連絡を交わすようになり。
 
 沢松と天国が恋人同士であることも出会ってから間もなく分かった。
 だが、それと関係なく屑桐は天国に惹かれた。
 そして、沢松もそれを知っていた。
 
 いつしか、天国は屑桐にも自分を抱く事を許すようになった。
 それは、沢松も認めていて。
 何故自分が天国を抱く事を許されるのか。それは屑桐には見当もつかなかった。
 しかし、3人でいると不思議とそんな事もたいしたことではないと思えるようになって。
 沢松も、屑桐にとっていい友人であり、共にいることは楽しかった。
 当然、天国との絆に嫉妬する事がなかったとはいえないが。
 
 そんな関係がごく自然になっていて。
 
 
 考える事を忘れていた。
 
 
 
 屑桐は、ふと言葉を漏らす。
 
 
 「天国…オレはお前のなんなんだろうな。」
 
 
 
 独り言のつもりだったそれは。
 天国の耳に届いた。
 
 
 「仲間なんじゃねーか?」
 
 
 
 天国が即答した答えは。
 
 
 
  
 友達以上で    
 
 
 きっと、恋人と同じくらいに嬉しい答え。
 
 
 
 「天国。」
 
 「ん?」
 
 
 「他人のフリなんか二度とするなよ?」
 
 
 
 
 
 
 
 「ああ。」
 
 
 
 オレ達は他人じゃないんだから。
                            END.

先日猿受オンリーでお会いしました阿難さまに大量の明美ちゃんを頂きまして、そのお礼に押し付けてしまった駄文です。
リク内容は「屑猿&沢猿前提の総受け」「みんなが驚く(驚かされる)ネタ」とのことだったのですが。
なんか全く内容が変わってしまいました
阿難さまこんなもんで申し訳ありません。
それと早々にHPにもUPしたことも重ねてお詫びします。
本当にすみませんでした!!