偶然の責任  後編



「ちーす。」
街中で告白してから三日後。
華武高校のグラウンドに現れたのは、制服姿の天国だった。

先日の試合で顔を知っていた華武高校のメンバーは、1軍も元2軍も驚きの色を隠せなかった。

「猿ガキ…?貴様、なぜここに?」
丁度ベンチで休憩していた屑桐が代表とばかりに話しかけに行った。
いつもなら主将は勿論1軍が直々に他校生の訪問に関わる事は滅多になかったが。

流石にごく最近にエースからフライとはいえ外野まで打ち出した人間は気になった様子である。

最も、それだけではなく、素人でありながら埼玉トップと言われるチームに臆せず立ち向かって来た天国にみな少なからず興味を持っていたこともあるが。


だが、今日天国は野球部に用があったわけではない。




「よぉ。」
天国の視線の先には、御柳芭唐がいた。


御柳は、天国に気づくと、ふっと表情を緩め心なしか嬉しそうな表情を見せた。

「…よう。」

「返事に来た。…時間、いいか?」
「ああ。…屑桐さん、ちょっと失礼します。」


そう言うと、二人は屑桐の返事を聞く前にその場を去っていった。


「どーユー関係ング・・・?」
「わっかんないけど何かワケあり気〜0(>0<;)0)」
「御柳…あとでグラウンド20週だ…。」
(それ漫画違いング…;)



二人は人気のない校舎裏に落ち着くと、本題に入った。
「来んの遅くなって悪かったな。」
「いや、かまわねーよ。で…返事は?」




「この3日間ずっと考えてた。犬飼の気持ちも、お前の気持ちも。それからいっちばん肝心の俺自身の気持ちも。」

「ああ…。」
御柳はらしくなく緊張している自分を自覚していた。


「んで、考えた結果だ。…悪いけど、お前の気持ちには答えられねーよ。」


答えは、御柳にとって予想できていた事…だったが、苦しい結果である事は間違いなかった。
「犬飼の…事は?」

「正直、はっきりはしてねーけど。でもあいつとは…一緒にいたいと思う。
 一緒にプレイして、一緒にケンカして…傍にいたいと思ってる。」


「それって友情じゃなく?」

「…ああ。」


「そっか。」

初・失恋。
しかもあいつに負けてる。

本来なら無茶苦茶ムカつくよな…。

けど。


御柳の心は、思ったより凪いでいた。


「御柳…。」
「謝んなよ。…お前が三日も考えてくれた結果だから…オレにゃ文句言えねえ。
 正直、断られて辛いし、犬飼に負けたってのもムカつくぜ?けどな。」


「…けど?」
「お前が真剣に考えてくれたから。スゲー変だけど何か嬉しいんだよ。今。」


ほんとに変だけど。


「それにまだ奪い取るチャンスはあるしな。」


にやり、と不適な笑みを見せる。


「…諦めねーな。てめえは。」
御柳の答えに一瞬脱力すると、ため息混じりに天国はつぶやいた。
「お前に言われたくねーよ。」


「まだまだ始まったばっかだからな。オレとお前の関係ってのは。」
そしてこれから繋がっていく。


この面白そうな相手との、楽しそうな関係。


相手には迷惑かもしれないが、オレには今までで最高の出会い。



それは全て、あの日の偶然の責任。


                                   end.


…思ったよりまとまりませんでしたが、一応100HITリク完結です。
真様、リクエストどうもありがとうございました!!
掲示板の方に返信してませんで、申し訳ありませんでした!!

これからもよろしくお願いします。

                                S.青沢



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