手袋
「主将ってさ、いつも手袋してるんすね。」
「え?ああ…これかい?」
いつも通り牛尾邸での特訓を終え、天国と牛尾は更衣室で着替えていた。
ちなみに獅子川は用があったらしく、今日は来ていない。
そんな時に、天国の質問があがった。
牛尾は、苦笑しながら言った。
「…ちょっとね。なんとなく。」
「へえ。」
濁した言葉に、天国は短く答えた。
それは牛尾にとっては意外な返答だった。
「あれ?聞かないんだね。」
非常にストレートな疑問をぶつけた。
すると、今度は天国が苦笑する。
「聞いて欲しいんすか?」
にこっと笑って。
答えた。
そうか。僕は聞いて欲しくなさそうな顔をしたんだ。
実際に聞かれたくはあまりない話だったけれど。
「…君なら教えてもいいかな。…って言ったら?」
少し悔しいだろう?
僕は君がすきなのに 君は僕を知りたいと思ってくれないなんて
「ん〜。聞いて欲しいって言ったら。」
「…しょってるね。」
本当はそんなことないけれど。
君が少しでも僕に興味を持ってくれるなら。
少しでも君の好奇心を刺激する事が僕に存在するなら。
いっそ聞いて欲しい。
「…聞いて…。」
「欲しい?」
全てを言う前に、天国が言った。
牛尾がそう言うのを最初から知っていたかのように。
なんだか、悔しい。
牛尾はまた、そう思った。
そして、何かを思いつく。
「いや、聞かせるのはもったいないから…。」
そう言うと、牛尾は手元にあったタオルを天国の顔に押し付ける。
「ぶっ、何するんすか?!」
牛尾はそのまま返事をせずにすばやく天国の眼を隠した。
「ちょ、何してるんです?!」
「ん〜。だから、言ってるじゃない。聞かせるのがもったいないから・・・。」
「だからって何で目隠しなんですか!!」
天国の見えない視界で牛尾は手袋をはずす。
「触れさせてあげるよ。」
「え?」