チビ




最後の夏が終わった。
野球部も引退して。
僕たちも野球部員じゃなくて、ただの十二支高校3年生になった。

僕と彼をつないでいた一番大きな関係はなくなり。

彼と会うことは、驚くほど少なくなっていた。

そんな日々の中で、今も彼は僕を呼ぶ。


「スバガキ!」


僕ももうそんなに小さくないのにね。
それに、もう18なのに、まだ彼はそう呼ぶ。


僕だって彼をこう呼び続けてる。


「兄ちゃん。」



でももう、それも終わりにしようかと思う。


彼の呼ぶあだ名は少し悔しくとも、その楽しげな声を聞くと嬉しかったし。
気軽に弟のポジションで彼を呼ぶのもどこか優越感があった。


だけど、もう終わり。


気づいてる?


僕の身長、また伸びたんだ。

引退してからまたこんなに。



君に追いついたんだよ。


だから、もう呼ばせない。
ガキだなんて。


チビだなんて。


#####


「スバガキ?どうしたんだ?」


教室で、彼女の凪ちゃんを待って一人残ってる彼に会いに行く。
凪ちゃんには、家の急用だから先に帰ったと、伝えた。


だから、凪ちゃんは来ない。

可愛い可愛い、そして腹の立つダイスキなマネージャーは来ない。


そう思うと、どこかどす黒くそしてじわりと楽しい。


彼は僕がいつものように呼ぶだろうと思ってる。

でも、それももう止めたんだ。


「あのね、天国。」

「え?」

彼は驚いた目をした。
そうだね、名前を呼んだもの。

出会ってから3年たって初めて。


ふと、振り返りながら。


僕は彼に近付いて腕をつかむと。

窓に押し付けた。


「な、何すんだ?!おい、スバガ…。」
やっぱり、力が強い。
だからあまり長く、話してる暇はないね。


「比乃。」

「あ?!」


「もうガキじゃないよ、天国。」


それだけ言って、彼の顎を取ると。


キスした。



「……?!」



ねえ、気が付いて。


僕はもう チビの 弟みたいな ガキじゃないんだよ。



君が愛しくて仕方ない 男なんだ。



end



またもリハビリです。書けない時間がなんだか長くてすみません。
自分でもどこか吐き出しどころがないのかなあ、萌えの。

さて今回はちょっと黒兎。
なんとなしにラクガキしてたら兎猿のキスになって。
短い文なら、と思い書いて見ました。

続き書けるかもしれません(笑)


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