絵葉書
元気 ですか?
「犬飼。」
「あ…。」
名前を呼ばれ犬飼 冥は顔を上げる。
「どうした?呆けていてはいかんぞ。これからメジャーに殴りこもうという人間が。」
「はい…屑桐さん。」
高校を卒業し、プロ球団に入って数年。
犬飼は日本の球界でも屈指のピッチャーとして成長していた。
そして来期からはついにメジャーリーグへと移籍することが決定していた。
高校時代、ライバル校のエースであった屑桐とは同じ球団の先輩後輩となり。
よきライバルとしてお互いに高めあっていた。
そして…今ではよき相談相手でもあった。
当然屑桐にもメジャーからのオファーはあったのだが。
家族を置いて行くことはできない、と来期からも同じ球団で契約することが決まっていた。
そして、もうすぐ犬飼はアメリカに向かうこととなる。
「…やっと…。」
そうつぶやくと、犬飼はさっきから眺めていたものに再び視線を落とす。
それは1枚の絵葉書。
「ん?」
そこにはサンフランシスコの風景があった。
「…あいつか。」
「……ええ。やっと会いに行ける…。」
それは高校を卒業してからまもなく届いた、そして…
天国からの 最後に届いた絵葉書だった。
高校の卒業式の日。
そのときはすでに恋人として付き合って1年半となるころ。
犬飼はプロ球団への入団を決めていた。
そして、天国は大学に行くのだろう。
お互いに忙しくなるが、これからも会おうと思えば会える。
だから、二人は終わらない。
そう犬飼は思っていた。
しかし天国は犬飼にこう告げた。
『犬飼…オレさ、アメリカに行くよ。』
『え?』
『向こうの研究室にずっと呼ばれてたんだ。
…あっちの大学に行く。』
天国の頭が悪くないことは知っていた。
だが。
『何で…黙ってたんだ?!』
『お前と…普通に一緒に居たかったから…。』
天国は少しうつむいて言った。
『…もう会えねーわけじゃねえだろ?』
『……ああ。』
『ぜってー会いに行く。』
『メジャーリーグに入って、アメリカに行ってやる。』
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「…普通に会いに行こうとは思わなかったのか?」
「…そんな悠長なことやってたってあいつの隣にゃいられねーっすよ。」
「全く…良い度胸だな。」
無理はないか、と屑桐は思った。
手元の新聞に視線を落として。
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「HEY!天国!!」
「お、ジェス。どした?」
「やったな!お前の論文!見ろよこの新聞。「日本の天才、世紀の発見」だってよ!」
「ってか、騒ぎすぎ。こっちはやっと結果一個だしただけだっつーの。」
「何言ってんだよ。その一個も出せねえ奴のほうが多いんだぜ?つくづく貪欲なやっちゃな。」
「・・・まだまだ、上がらなきゃ…な。」
「…やれやれ。…おっここにもすげー日本人いるみたいだぜ?
こっちは野球だけどよ。」
「え?」
「んーと…「ついにサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍…。」へえ、ハンサムじゃん。
名前は…。」
「「メイ・イヌカイ。」」
答えが重なる。
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「…よお。」
「…早かったな。思ってたより。」
「…ほかに言うことあんじゃねえか?」
その姿に、声に、笑顔に。
「会いたかった…。」
「オレも。」
ただ 君に。
end.
未来です・・・。
しかも犬飼くんと屑桐くんが何か仲良いし…。
ありえない….
さらに絵葉書…関係ない…。
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