夢見月の攻防戦
忘れさせないで。
忘れたくない。
忘れてしまう。
忘れないで。
夢でもいいから。
覚えていて ほしい。
「ガブリエル…?」
「ぅ…ん…っ…ダメだ…離れないで…っ。」
「どうした…?今日は…いつもより熱い…。」
吐息まじりの声とともに、腰を動かす。
「あぁ…!」
愛しい者。
この腕の中で何度も何度も抱いて、何度も離れていく。
神という名の鎖の下に。
私という鎖はなんと弱いものか…と、いつも思いながら。
「ヴラディス…。」
それでも、何度も奪うように引き戻す。
天使は自分では戻りはしないから。
そして戻れば。
また甘美な時間をともにする。
それを望んでいる…私も、そして彼も。
ふと、ガブリエルが私の首に腕を伸ばす。
「ガブリエル?」
「……。」
ガブリエルはそのまま何も言わずに私の身体を引き寄せた。
「ガブリエル…?」
「…愛している…ヴラディス…ヴラディスラウス…。」
「…っ。」
耳元にささやかれたのは愛の言葉。
その言葉は私に喩えようのない幸福感を感じさせた。
しかし。
その声は、私にどこか不安を感じさせた。
そして私は、その不安をかき消すように彼の身体をかき抱く。
「……ガブリエル……。」
愛してる。
誰よりも何よりも、世界よりも。
「…っ…ぅ。」
ふと、すすり泣くような声が聞こえた。
「ガブリエル…?」
身体を離し、顔を見ると…涙があふれていた。
何度も見た、涙。
何度も流させた涙…。
だが…。
「何を…泣く?」
「…ヴラディス…忘れないでくれ…どうか…。」
「ガブリエル?何を…?」
「忘れないで…。」
その涙は止まらなかった。
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「覚えていないのだな。」
カラン…。
月の美しい夜、私は彼と再び会った。
その瞳にあったのは、驚きと戸惑い。
なかったものは、私の知っている全てだった。
「何を覚えていればいい?」
私は忘れない。
「お前が忘れるなと言った事だ。」
愛しい者よ。
忘れはしない。
お前が忘れても。
私だけは。
あの甘美な夢を…。
「私はヴラディスラウス・ドラクリア…伯爵だ。
1422年に生まれ…殺されたのは…1462年。」
決して 忘れない。
end
正直煮詰まってます。^^;)
今回はホント伯爵とガブリエルのラブシーンを書きたかっただけですね。
いつになく甘く味付けてみましたが、いかがなものでしょうか?
お題には添えてませんが…。
あ、ホントは封印しようかと思ってた「ハイド×ヘルシング」にしようかな〜とか思ってましたけどね。
需要は絶対無いから結局やめ。
もし読みたい方はご一報を。書きますよ?(おい)
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