木漏れ日


「…エル。」

「……ん。」

「おい、ガブリエル。目を覚ませ。」


どこかで聞いた声に、目を覚ます。

そこにいたのは。


「…ヴラディス…?」

友人の姿だった。

「何だ、寝ぼけているのか?
 私との遠乗りの約束を忘れるとはいい度胸だな。」


少し怒ったのかすねたような顔で、だがどこか面白げに友人は私に言った。


「さあ、日の入りまでの時間は限られているぞ?
 早く準備しろ。」


「ああ…分かったよ。すまないなヴラディスラウス…。」



そういいながら空を見上げると、木漏れ日が美しかった。



#######


「…シング!ヴァン・ヘルシング!」

「…ディス…?」


「はあ?誰を呼んでいるんだい?」



「…!」



ヴァン・ヘルシングはがばり、と勢いよく起き上がった。

ここはヴァチカンの中庭。
どうやら彼はうたた寝をしていたようだった。


そこにカールが起こしに来てくれたようだ。




「カール…か。すまん。寝ぼけていたようだ。」

「珍しいね。そんなにいい夢を見ていたのか?」


カールは興味津々といった様子でヴァン・ヘルシングに詰め寄る。


「…そう…だったのかもな。」


何も覚えていないが、安らぎを感じたように思う。
そして、誰かの名前を呼んだ様な…。


「さっきは誰の名前を呼んでいたんだ?
 ヴァチカンでは聞き覚えがない名前みたいだったけど…?」


「…やはり呼んでいたのか…。
 よく、覚えていないんだ…。」

そのことばに、カールはあからさまに落胆の表情を見せる。

「そっかあ。残念だね。

 君が記憶を失う前に会った人かもしれなかったのにねえ。」


「…そうだな、少なくともヴァチカンの人間じゃなかった…ように思う。」


あれは一体誰だったのか。

自分に安らぎをくれたのは…。

そして…。


「思い出せない…な。」


ふと空を見上げると。


美しい木漏れ日が目に映った。


それはまるであの日のような。



                             end


突発小話です。
任務前、うっすらと「彼」の記憶を夢に見るVHでした。
カールってばヴァチカンの人間の名前全員把握してるんでしょうか(笑)


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