好奇心
「ねえ、君。」
「え?」
夕暮れ時。学校からの帰路。
幾分艶めかせた、けれど確かに男性と分かる声に天国は振り向く。
そこにいたのは、顔に痣ともペイントともつかぬ色をつけた男。
「あんた、誰?」
見知らぬ男に当然の質問を投げかける。
「へえ。思ったより素敵じゃない。
テンゴクくん?」
「…セブンブリッジの人か。」
「あら。鋭いわねぇ。」
自分にその呼び名をするのは一人だけ。
そして…改造しているが明らかにその人物と同じ制服だった。
「で?何か・御用・デスか?」
警戒心をわざとむき出しにして話を続ける。
大した用ではないのは眼に見えているからだ。
それに直接試合したわけでもないのに自分の情報を見せるのも煩わしい。
自分はこの人とは何のかかわりもない他校生…。
セブンブリッジのような強豪からすればただの素人の1年生。
たとえある人物を通じて何らかの情報を持っていても。
自分は たいしたことのない 人間である
気にかけるまでもない 人間だ
そう思っていればいい。
「あたしに見せるものはないって言いたいの?」
くすくすと笑って答える。
「……。」
少し驚いた。
目の前の人物は…やはり、只者ではない。
「なんのことでしょう?」
かといって見せる事もない。
「ふふ…素敵よ、君。
あの子に渡すのはもったいないわあ。」
「……剣菱さん?」
出てきた名前に、くっと笑いを漏らす。
「そうね、あの子にも…あの子の妹にも。
誰にもよ。」
「あんたが決めることじゃないでしょ。」
「あら、アタシの決めることよ。
絶対君を手に入れる…ってね。」
「…勝手な奴。」
呆れた眼差しを向ける天国。
勿論相手はそんなものに屈するはずも無かったが。
とりあえずこれ以上ここにいるのもなんだか鬱陶しい。
「…帰っても良いっすか。」
「いいわよ。今日は見逃してあげる。」
それはつまり、次は見逃さないかもしれないと言う事。
天国は大仰にため息を吐き、再度帰路に向かうべく相手から背を向けた。
すると最後に、とばかりに声がかかる。
「ねえ、好奇心が愛に変わる可能性ってどれくらいかしら?」
天国は視線を向けることなく答えた。
「0から100%。」