繰り返し



「好きだ」

「好き」


「好き」



…うるさい。



自室の布団の中。天国は耳にまとわりつく声に閉口していた。
傍に居るわけでもないのに頭から、耳から離れない声。

声の主は知っている。



「折り紙野郎…。」


華武高野球部キャプテン、屑桐無涯。

彼と会って3ヶ月。
「付き合って欲しい」という彼の告白に、天国はなんとなく答えた。
天国が屑桐を好きなのか問われると、気に入ってはいるが。

そういう感情を持っているかは分からない。

そんな不安定な気持ちで答えていた。


だが。



付き合うようになってから屑桐は繰り返し言う。


「好きだ。」



「…あんたがこんなに言葉に出すなんて意外だよな…。」
ふと、天国は屑桐にこうもらした事がある。

すると。
「自分でもそう思う。
 だが…。」

「だが?」


屑桐は天国をいとおしそうに見つめ。

「お前の傍に居るとこうやって気持ちを言葉にするのも悪くないと思える。」

きっと誰も見たことのないであろう、柔らかな笑み。

天国は顔を真っ赤にして俯いた。


「…反則…。」

「それは心外だ。オレは正々堂々と言っているぞ?」
くすくすと楽しげに笑う屑桐に。

天国は高鳴る鼓動をおさえきれずにいて。


それは自宅に帰って布団に入るとなおいっそう悪化した。



「正面から来るから余計タチ悪いっつーの…。」

感覚をおかず天国の胸に貫いてくる屑桐の言葉は、天国に多大なる影響をもたらしてきている。


今では家に帰っても学校に行っても屑桐の言葉が蘇る。


ぐるぐるぐるぐる





「天国!」

「!!」

突然、階下から母親の声。
天国はびくっと身体を起こした。


「な…なんだよ?いきなり!」

「電話よ。くずきり…ってヒトから。」


「はあ?!」

天国は驚いた。
確か携帯番号は教えたはずだが、家の番号は教えていない。
それもこんな夜に。


いろいろな疑問を感じながら、天国は受話器をとった。

「はい。」

『猿野か。』

「そうですけど…なんなんですかこんな時間に。」

『…声が聞きたくなってな。』

「…だったら携帯にかければいいでしょ。
 何で家にかけてくるんすか。それにオレ家の番号教えましたっけ?」

『家の番号は録から聞いた。
 家にかけたのは…御柳が、「家の人間に知ってもらうのも攻略の一つだ」とかなんとか言って…。」


「…。」

なんつー正直なんですかあんたは。



『…どうした?猿野。』
「いえ、何でもないです。」

『そうか…。』

そこまで行って会話は途切れた。

天国は一呼吸おいて。


『猿野?』

言った。


「屑桐さん、好きです。」



『!!!???』


受話器から大きな音が響く。

どうやら屑桐は電話を落としたらしい。

天国はしてやったりと笑い。
受話器を置いて電話を切った。



そして天国は正々堂々自分を攻略した屑桐氏に



全面降伏と宣戦布告。




                                    end


意味のわからない文章ですんまそん。(脱兎)

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