境界線
きっかけは小さな事だった。
街中で見慣れない顔と、見たかった顔に会った事。
それが自分の気持ちに不快感を持たせたから。
「…何か、びみょ〜に嫌な感じだね〜。」
そう思ったから。
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「やあ、てんごく君。」
「剣菱さん!?
どしたんっすか・・・って、ああ。凪さんならまだ部室にいますよ。」
十二支高校のグラウンドに着いた鳥居剣菱は、トンボがけの真っ最中の猿野天国の元に向かう。
天国は剣菱の姿を確認すると、少し驚いたが。
また妹である凪を迎えに来たのだろうと思い、彼女の居場所を伝えた。
しかし、今日剣菱がこの場所に来た理由は、他にあった。
「いや〜。今日はびみょ〜に凪じゃなくてね、君に話があったんだ。」
「オレっすか??」
天国は剣菱の言葉に驚いたが。
断る理由も無く。また、凪に関連したことであるかもしれないと、剣菱の話を聞くことにした。
トンボかけは丁度終了し、天国は着替える前に剣菱の話を聞くことにした。
剣菱は、人気の少ない裏庭まで足を運ぶ。
「で、話ってなんですか?」
「実はね〜。昨日見ちゃったんだ。
君が街中で男と歩いてるとこ。」
「え?」
天国は一瞬身体を硬直させる。
だが、すぐ気を取り直して言った。
「あ、ああ。
昨日先輩と買出しに一緒に行ったんですよ。
見てたんなら声をかけてくれたらよかったのに。」
あはは、と笑って答える。
剣菱は、言葉を付け加えた。
「そうしたかったんだけど〜。
キスしてたから声なんかかけられなくなっちゃって〜。」
「!」
天国は今度は本格的に身体をこわばらせた。
「びっくりしちゃったよ〜。
君、凪が好きだって言ってたけどちがったんだね〜。」
「……。」
天国は肯定も否定も出来ずに俯いた。
剣菱はその様子に、天国の彼に対する本気を感じ取った。
それは剣菱の気持ちに刃をつきたてる。
「……凪が聞いたらどうするんだろうね。」
だから、最も卑怯な手段をとった。
「…っ。
剣菱さん…。この事は…お願いですから…。」
天国は真剣な目で剣菱を見つめた。
それは、自己保身などはカケラも考えてない瞳で。
「凪に聞かれたら嫌われるから?
この期に及んで凪の事好きとか言うの?」
「…凪さんがオレをどう見ても…それはいいんです。
でも、あの人まで…あの人までオレと付き合ってるからって軽蔑されるのは…!」
ああ、やっぱり。
君は本気で彼が好きなんだね。
悔しいよ。
「…じゃあ、条件があるんだ。」
剣菱は残酷に微笑んだ。
「何ですか…?」
「オレにキスしてくれる?」
天国は目を見開く。
流石に驚いたようだ。
しかし、その先は剣菱の予想を外れていた。
「…いいですよ。キスくらいなら。」
そう言って。
天国は、剣菱の唇に口付けた。
触れるだけのキス。
唇は温かかったけど。
「…約束です。」
そう言って去っていった君は、冷たい瞳をしていた。
君が少しでも欲しくて、手に入れたキスは。
君とオレの間に今までになかった境界線を引いた。
end
お題に全く添えてないし。(泣)
天国の相手はご想像にお任せします。最後まで決められなくて…。
まあ先輩ということで。(おい)
剣菱君ふられてるし・・・。
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