泣き顔



「蛇神さん…。」

無明眼を使い力を使い果たし…
そして失明の危険を及ぼすほどに傷ついた蛇神の傍に、天国はいた。


「誰だよ、一人で野球すんなとか言ったのは…。」

天国は悔しげに呟いた。


そして、搾り出すように。

大きな瞳から、涙をこぼした。


「バッカやろ…。」





「…目上の者にそのような口を利くものではない。
 まったく、主は…。」

「蛇神さん?!気づいてたんですか?!」

天国は驚いて蛇神の顔を覗き込んだ。

「ああ、先程…な。」
「そっか…。よかった…って、アンタなんつー無茶苦茶するんですか!!」

安堵の息を漏らしたかと思うと、天国は急に蛇神につっかかった。

「アンタは!!せっかくケガも治ったばっかりだったのに…!!
 また、こんな…!
 アンタはこの野球部になきゃダメな存在でしょ?!
 
 …やっとまた一緒に野球できるかと思ったのに…!!」

息をつく暇もなく天国はまくしたてる。

蛇神はそんな天国の言葉を黙って聞いていた。


「…無茶苦茶ばっかり…。」

ひくひくと泣き声を漏らしながら文句を続ける天国に、蛇神は苦笑して言った。
「…主に言われるのは心外だな…。」



「…そんな…。」

蛇神はそっと天国の顔に触れた。
そこに天国の顔があるのが初めから分かっているかのように。


「蛇神さん…?」
「もし、主が危険な目にあってもやればチームのためになると分かっている方法があるとすれば…。
 実行せずにいられるか?」

「いられません。」
天国は即答した。

「そうであろう?…なら…。」

「そうですよ。でオレが実行したらアンタは怒ったでしょう?」
「…っ。」

蛇神の言葉を遮って言った天国の言葉に、今度は蛇神が言葉をつまらせた。


「天国…。」

「だからオレも怒ります。
 アンタが心配だから…尊さん。」


「そうか…。」


蛇神は触れたままの天国の頬に、涙が濡れているのを感じた。


「すまなかった也…。天国…。」


「ええ、大いに反省してください。」


そう言って、天国は蛇神の唇に軽くキスを落とした。


                                    end




163発目、無茶苦茶した蛇神くんに無理矢理天国を絡めました。
あんまり蛇牛ちっくだったので悔しくなっちゃって。(苦笑)
蛇牛好きの方、おられましたらすみません。
短く甘く、ちっさなワンシーンです。(笑)


戻る