男は○○?


気にしたことなんかなかったけど。

気になると。




「……なんだ?菊尼。
 さっきから人の顔をジロジロと…。」

「…いや、なんでもない。
 気にしないでくれ、屑桐。」


ここは華武高校野球部専用グラウンド。
主将でありエースである屑桐は、先ほどからチームメイトの一人の視線を浴びていた。

華武一軍のライトを守る菊尼である。
いつも寡黙に真面目に練習をこなしている彼が、今日は練習の合間にじっと屑桐に視線をやっていた。

そんな状態を気にするなと言われても、気になってしまう。

同じ一軍内で、比較的仲の良い朱牡丹も菊尼に質問してみた。

「菊尼さん、どした気?(・0・;)
 さっきからずっと屑桐さんのこと見てる気だけど…。」


「…いや。
 たいしたことじゃない。」


菊尼は苦笑しながら答えた。

そして、一言。


「…やはり屑桐は美形だな。」


難しい顔でとんでもないことを口にした。


「はあぁあああ?!!(@0@;;)/」



(きっ菊尼さんまさか屑桐さんの事?!)


この日を境に75日間以上は菊尼の片思い説が流れることとなった。



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「で?どうしたんだ?
 お前が家に来るとは珍しいな。」


ここは華武2軍ピッチャー。帥仙の家。
菊尼は同学年で一番口も堅く自分にとっては最も話しやすい相手の家を訪れていた。 


「…悩みか?」
「ああ…。どうしても誰かに聞いておきたくてな。」

菊尼の真剣な表情に、入れてきたコーヒーを差し出すと、帥仙は正面に座り話を聞く姿勢を整えた。

「…最近お前が屑桐をやたら見てることと関係があるのか?」
「…ああ。」

最近の部活での菊尼の奇行。
広まるうわさ。

その全ての原因を話すというのである。
帥仙は場合によっては男同士の恋愛沙汰に首を突っ込むことになりそうだと、やや面倒にも思いながら、邪険にできるはずもなく、聞くことにした。


「…俺も屑桐も華武の1軍だ。」
「…ああ、そうだな。」

やはり屑桐のことか、と話を進める。

「身長も奴とはあまり変わらない。」
「?ああ。」
確かに二人とも180cmそこそこで、似たような身長である。

「しかし学業成績はどちらかというと俺の方がいい。」
「??ああ…?」
確かに総合的に好成績な菊尼の方が、真面目だが英語がやや苦手な屑桐より成績はいい。

だが、それが何の関係が?



「それに家の裕福さも俺の方がマシなはずだ。」
「…???」
確か…というか屑桐より貧しい家庭は私立高校では探す方が難しいだろう。
しかし菊尼の言わんとするところは全く見えなくなった。


「……????……それで?」




「結果俺が屑桐より確実に大きく負けているのは 顔 だ。」


「は?…まあ、そりゃ…。」

(こいつもブサかねえが、確かに屑桐のが顔はいいよな…。)


「だから?」


「そこに猿野が俺でなく屑桐を選んだ要因があると思われるのだ!」




ガコッ




…帥仙はテーブルに頭を打ち付けた。




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菊尼は、十二支高校との練習試合の折、(菊尼の一方的な)運命の相手を見つけた。
それが十二支高校1年、猿野天国だったのだ。

しかし、それから数週間ほどたったとき、その運命の相手を再度見た。
屑桐の傍らで、楽しそうな笑顔で。


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「…で、何で猿野が自分でなく屑桐を選んだのか論理的に考えて
 問題点を解決して猿野と恋人になりたい……とそう言いたいんだな?」

帥仙は脱力して菊尼の話をまとめた。

「そのとおりだ。
 しかし…顔では、解決が難しい。
 そこでその他の問題点を考えたんだがやはり顔がネックになっているようにしか思えん。」


(こいつ…根っからの恋愛下手かよ…。)

「………。」

帥仙は友達のよしみで本人にはたらきかけるとこからはじめるよう言おうかと思った。
なんせあの試合には菊尼は出ていないのだ。
問題の相手は菊尼の存在すら知らないだろう。



しかし。


「…帥仙。やはり男は顔なのだろうか…!」

多分屑桐がそこまで出ていては、勝ち目は薄いだろうし、
最初から諦めさせるのは性にあうものではなかったが。



「…顔じゃねえの?」


帥仙は、野球以外異常に世間知らずな友人を哀れに思い。

そう返した。




その後屑桐でなく鏡を延々と見続ける菊尼に別のうわさが広まったが。


それは別の話…だろう。



                            END



全猿連さまに投稿しました。正気を疑う人選。(苦笑)
脇キャラの哀愁みたいな感じ?

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