淋しさ





「兄ちゃん?」

「ばいばい、あまくに…、おかあさんを大事にするんだぞ?」

「ばいばい…て、なに?
 兄ちゃん。どこいくの?」

「遠いところ…おとうさんと、いっしょに。」

「…いつかえってくるの。」


「……おれとあまくにが おおきくなったら…。」




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「大キクナッタラ…カ。」

あの日から数年。
身体も…何もかも大きくなった彼は日本で、弟に会った。
会うつもりなんて本当はなかった。

でも、一度は日本に帰りたかった。


気にしないようにしてきたつもりだったけれど、母と弟がいる場所。


本当は会いたかったのかもしれない。


「大キクナッテイタナ…。」

十年ぶりに見た弟は、昔の自分と同じ顔で。
背も伸びて、身体も大きくなって。
高校生になっていた。

当たり前だ。

いつまでも5歳のままなわけじゃない。

自分が日本を去った7歳の時から変わり果ててしまったように。


「ワスレテイタト思ッテイタガ…。」

写真なんてすべて父に破り捨てられていた。
過去は捨てろと、冷たく言い放った父の言うとおりに、自分は捨てていた。
そうしなければいけなかった。

だから。過去を…母を、弟を。


大事だったもの全てを捨ててしまった。


だから大事だったものは今…。


「憎ンデイルノダロウナ。」

怒りと憎しみに満ちた瞳。
強い意志で、自分と父を憎んでいた。


あの日哀しそうにゆれていた瞳は熱い怒りを見せて。


捨てたはずのものの残渣が胸に残っている。
胸の中で燻っている。



本当は大好きだった。

きれいで優しいおかあさん
よく笑って喋って、明るくて元気なあまくに。


会いたくて会いたくてたまらなかった。



「アマクニ…。」



絞り出された声は闇に溶けて


消えた。



                            

end

初黄泉→猿ですね。
マジでヤマもオチも意味もありません!!
今回はリハビリというか場つなぎというか…そんな感じですね(苦笑)
もっとキャラを練らないと…(泣


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