ここは埼玉県最強の強豪野球部を持つ、華武高校。
夏の大会も、県対抗の総力戦も終わり、3年が抜け。
新たなチーム編成が行われ、それもそろそろ慣れてきた頃だった。
1軍まだ唯一のスラッガー、御柳芭唐は、真面目に練習に取り組んでいた。
大会が始まる前までは、部をサボることも少なくないと素行の悪さが問題視されていたが。
夏の大会が過ぎてからは、そのようなこともなく熱心に部活に出ていた。
「今日の練習はこれまで!」
「「「「ありがとうございましたーーーーーーーっ!!」」」」
練習が終わると、3軍に後片付けを任せ、1軍の面々は部室に戻っていった。
「ふー…っ。」
シャワーを終えて、服を身に着けながら御柳は携帯を確認した。
「…あ。」
それを見たとたん、御柳の顔が以前なら考えられないほどゆるんだ笑顔になった。
それを見て背後からひっそりと2年の朱牡丹録が御柳に寄ってきた。
「ミーヤ〜〜〜。(* ̄m ̄) な〜に幸せ光線出しまくってる気〜〜?」
「げっ!先輩何いきなり引っ付いてきてるんですか!!」
「いや〜ミヤの最近の変わりっぷりの原因を知りたいな〜と思ってさ(¬ー¬)
オレが代表で聞きに来た気なわけ。」
「つまり人のプライベートに堂々と立ち入りに来たわけっすね…。」
「簡単に言えばそういうこと気(⌒_⌒)v」
「ほっといてくんねーっすか?ったく…。って、ちょっと!」
「ミヤの携帯ゲーット!ξ\(^。^ ))))) 」
「あーっ!!」
まんまと御柳の携帯を手に取った朱牡丹は、早速さっき届いたメールを見た。
すると。
「あ。これ…。」
携帯の内容はこうだった。
「カラオケにつきあえ!7時半に駅な。」
「すげえ命令形だべ…ミヤにこうも唯我独尊なんてすごいングね〜…。」
「流石だな〜、猿野の奴。(^^;)」
「いーから返してくださいって!」
御柳は携帯を奪い返すと、いつの間に済ませたのか荷物と共に部室を出て行った。
「じゃっ失礼します!!」
「あーらら(^◇^ ;)ラブラブじゃん!」
「かなり羨ましいングね…あいつ面白かったから。」
「…そうだな。」
#######
「おっせーぞ御柳ぃ!
時間は守れとお母さんに教わらなかったのかよ!」
「うるせえ、いきなり呼び出しやがって!
こっちはてめーんとこと違って練習時間なげえんだよ!」
「へー、真面目に練習してきたんだ。感心感心。」
「な…っ。オレが真面目じゃねーみてーなこと言うんじゃねえよ!」
「なんだ自覚ねえのか?夜の帝王。」
「うっせえ、最近はやってねーよ!」
「前はやってたんだ。」
「う。」
結局言い負かされてしまった。
どうも夏に諭されて以来、こいつには弱い。
あのひとに似てるって思って…やっぱり似てて。
だけど全然違う。
そんなこいつと一緒にいるのが、オレは楽しいと感じていた。
学校が違うことを残念に思うようになるほどに。
「んじゃ行こうぜ、由太郎の奴も待ってるし。」
「はぁ?村中も来てるのか?」
「ああ、空蝉同窓会やろーぜってな。
言い出したのあいつだし。」
「…そっか。」
由太郎、の名前が出て少し気が沈むのを感じる。
別にあいつが嫌いなわけじゃない…が。
あいつの方が猿野とは仲がいいから…。
あーあ、ガキみてえだな、オレ。
「何ぼんやりしてんだ?早く行こうぜ。」
「…ああ。」
オレに笑いかける顔を見る。
現金なことで、もう気が晴れてくる。
あの人に野球を教えてもらってた時も、こんな風に楽しかった。
だけど、今はもっと違う楽しさ…嬉しさがある。
それはつまり。
「…惚れてるんだろうな…。」
「?何か言ったか?」
「いーや、別にぃ。」
そういってオレはこいつの手を握った。
「あ?おい、何だよこの手は。」
驚く猿野に、オレはにんまりと笑う。
あー、やっぱ触ってると嬉しいわ。オレ。
「お友達のおててをつないで一緒に信号を渡りましょう。
って書いてあるじゃん、ほらあそこ。」
「はあ?!ありゃよーちえんじ用だろ!お前いくつだ!?」
「お前より年下v」
「って3ヶ月しか違わねえだろうが!!」
「ほれ、さっさと行くぜ、待ってるんだろ?村中。」
「つーか手を離せーーー!」
振り解こうとする手を実は渾身の力で握り締めて、オレは猿野を引っ張った。
今回は不意打ちだけど、いつかは…。
そんな風に思いながら。
オレは今、また前を向いている。
あの人が教えてくれたように、こいつと一緒に。
end
夏が終わってから、その後の二人を捏造。
普通に友達しながら恋愛に発展していくのもいいなあと思いまして。
けど最近の男子高校生ってどういう遊びしてるのかなあ…。
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