冷ややかな熱さ 


前編


暑い…暑すぎる夏に出会った雪は…。

冷たくて…恐ろしく熱かった。



########


「白雪…監督?」

「やあ、猿野クン。呼び出しどおりにきてくれてありがとう。」


県対抗の選手権のために兵庫県まで来てから数日後の、ある日。
天国は匿名の手紙で、深夜にある場所に呼び出された。


訝りながらも天国が着いた部屋にいたのは、埼玉選抜チームの監督。
白雪静山だった。


名の通り静かに山のごとく厳しい采配を振るう、色の白い男性。
それが天国の白雪に対するイメージだった。

「アンタだったんすか、コレ。
 あの…話って、何ですか?」

天国は単刀直入に用件を聞いた。
どうやらあまりいつものように話をごまかせる様子ではない。

白雪の表情は不敵に、そして冷ややかに…笑った。


「ふふ、せっかちだね。
 まあ立ち話もなんだし…すわりたまえ。」

「は、はあ。」

今までの経験上、この人物に逆らうのはあまり得策ではない。
天国はそう思い、白雪の言うとおり部屋にある座布団に腰を下ろした。


白雪は天国の正面にゆったりと腰を下ろすと。
にっこりと笑って天国に聞いた。

「どう?あれから御柳クンたちとは仲良く出来てるかな?」

「え…?あ、いや…仲いい…っていうのはちょっと。」
いつもならば全力で否定していたが、そのせいでまた謹慎をくらってはたまらない。
そう思い、天国は質問に答えあぐねた。

だが実際のところ。
北海道選抜チームとの対戦をはさんで、夜の公園で感情を吐き出しあってから。
御柳との関係に、以前ほどの険悪さはなくなっていた。
今は言ってみればちょっと気に食わないケンカ仲間のような、そんな関係に近かった。

「まあ…前ほどはケンアクっつーことはなくなってますけど…。」
だから、素直に答えていた。


そういうと、白雪は口元の笑みを深くする。

「そう。御柳くんも似たようなことを言っていたよ。
 仲が良いってほとじゃないが前ほど君を嫌っては居ない…とね。」

「え…。」
白雪の言葉に、天国は驚いた。
それとともにじわりと…暖かな気持ちがわいてくるのに気づく。

「そ…っすか。」
好きというわけじゃないが、互いに少し近寄れたような気がする相手に、
同じような感情をもたれるのは理屈ぬきで嬉しいことだった。


そんなふうに思って少し表情を和らげる天国に、白雪は密かに手元を動かした。


「!?」


ガタン…



「な…?!」



気づいた時、天国は傍にあったテーブルに上半身を押さえつけられていた。
白雪が天国の身体に覆いかぶさるように乗り出す。

「監督…?!一体、何を…!?」
天国は驚いて白雪の身体を持ち前の筋力で押し返そうとする。


しかし。



「大人しくしてくれるかな?」


「!!」

白雪は手に持っていた日本刀を天国の視界に入れた。

日本刀、という脅威を視覚に入れた天国は一瞬硬直する。



ドスッ



白雪は容赦なく天国の顔の横に日本刀を差し立てた。


「言うこと聞かないと…痛いよ?」

天国はその言葉に、力を抜いた。



白雪の眼には、狂気のような感情が見えた。

「君は本当に魅力的だね…。
 誰でも君に惹かれずにはいられないし、君も誰でも大切にする。」

「……?」

ふと、話し始めた白雪に、天国は恐れながらもゆっくりと彼を見た。


「妬けるよ。本当に。」

「え?」


気づくと、白雪の空いた左手が天国のTシャツの裾をたくしあげ素肌に触れている。


「やめ…!監督、何を…!!」


「すごく妬けるよ…。
 僕だってね、君が欲しくてしかたないのに…。」



白雪の本音が言葉になった時。

天国は白雪の意図を、初めて正確に解った。


それはもう遅かったのだけれど。










To be Continued…



超久々のミスフル裏単発小説です。
今回は、お絵かきチャットの合同絵から。
お相手してくださった戸塚かなた様が、わたしの汚すぎる絵に素敵な色を塗ってくださいましたv
本当にありがとうございます!
で、ここで出た黒い白雪監督の鬼畜語りを、今回お話にしてみました。
…なんか続いちゃいましたけど…。

本裏要素は後半にて。

戸塚様、お絵茶ログの使用許可ありがとうございます!


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