静か


「あれ?一宮センパイ!?」
「お前…猿野!?」


何年ぶりかで、高校時代の後輩に会う。
あの頃から騒がしかったが、今もそれは健在のようで。

有名なプロ野球選手となった今もそれは変わらないようだ。


「で、あそこでいきなりカーブですよ?
 何か屑桐さんタチ悪くなってねえっすか?」
「確かに直球大好きなあいつらしくないがな。
 お前にはどうしても打たれたくなかったんじゃねえか?」

ストレートに比べたら変化球はやはり苦手のようだ。
オレのカーブを即効で満塁ホームランしてくれた奴だが、それも変わらない。

「次の試合は絶対勝ちますよ!」
「ああ、頑張れよ。」

しかし平凡なサラリーマン(それなりに高給取り)が有名な野球選手と話しているのはどうも珍しい光景だ。

まあ先輩後輩なのは事実ではあるし。
猿野自身そんなこと全く考えてないのも原因だろう。


コーヒーを傾けると、ふと目の前の声が途切れたのに気付いた。

「?どした?」

「いやー…先輩すっかり大人っぽくなっちゃって。」
「…お前な。それが先輩に対する言葉か?;」
「や、だってさ。
 何かカッコいいビジネスマンって感じですし。」
「おまえこそカッコいい野球選手だろうが。
 彼氏にしたい選手ベスト5に入ってただろう。」

(うち4人は埼玉勢だったりするが。)


「…けどさ、やっぱ違いますよ。
 ホント言うとオレ、一宮先輩憧れてたし。」

「は?」

思ってもみない事を言われ、コーヒーカップをすべり落としそうになる。


「オレを?…それは意外…だな。」
少しどぎまぎする。


オレにとってもコイツはある種憧れだった。
野球への才能もそうだが、一心に努力できるその心根にも憧れていた。

綺麗だ、とすら思っていたのだから。


「…オレは何か、先生とか規制とか、そんなもんに従うもんかって思いながら生活してたから。
 …真面目に学校生活とかやらずに終わってたし…。」

「?おまえそうしたかったんじゃないのか?」

「…そうしたかったと思ってたんですけどねー。
 ホントはそうでもなくて。
 勉強できるわけでもなかったし…んー…何ていや良いのか分かんないけど。

 いや、たっつんもそうだったけどな。
 何か一宮先輩に憧れてた。」

説明にならない説明。
ただ聞いていると…まるで。


「…オレが好きみたいな言い方だな。」
ちょっとからかうように言ってみた。

すると。



「え。」


「え?」



少し時間をずらして 

二人とも固まってしまった。



静かすぎる甘い時間が、少し流れて。




「…バレた?」


「………////。」

冗談にしたくてもできない雰囲気に気付いて。



オレは10年隠していた想いを告白することにした。




                                     end



久々のミスフル、またもリハビリですね。
今回は個人的に大好きな一宮くん。
IT企業とかでこつこつと確実に成果をあげていくタイプのサラリーマンということで。
いや、営業じゃないでしょ。絶対。

というわけでちょっと未来ネタでした。

やっぱり天国は良いですvv
イベント楽しかったですvvありがとうございました!


戻る