そう、なればいい。



そうじゃなくて、そんなんじゃなくて。


そんなのになりたいわけじゃなくて。


だから。


######

「剣菱さん。」

「…あ。」

目を覚ますと、そこは病室。
転寝をしてたらしい。

目の前に居たのはてんごく君。
笑って目を覚ましたオレを眺めてた。

あれ…凪もいたはずなんだけど。
少し目を泳がせると、てんごく君が答えてくれた。


「凪さんなら帰っちゃいましたよ。
 夕食の買い物があるからって。」

「えー…。」

それを聞いて少なからず気を落とす。

今はこーゆーことになってるけど、やっぱ凪は可愛い妹だし。
顔を見てたいな、とはやっぱブラコン兄(自覚はある。一応。)としては思うわけで。

「凪の「また明日」が聞きたかったのにー。
 起こしてよ、てんごく君。」

「ホントに兄貴ですかアンタ;」

恋人みたいな言い方しないでくださいよ、とてんごく君は少しふくれる。
ま、そうだよねー。てんごく君は不本意だけど凪の彼氏だし。
けどオレが凪に求めてるのは純粋に癒しなんだけどね。

誤解してるかな?


そう思っててんごく君の表情をのぞき見た。
すると、意外にも少し笑ってる。

「何笑ってるの?」

「いえ…やっぱちょっと羨ましいなと思って。
 仲が良くて。」

…この場合はやっぱ凪と仲良しのオレが羨ましい、ってことだよね。

「…凪と?」

オレは思ったとおり素直に聞いてみた。

「うーん、それもありますけど。」


返ってきた答えは、ちょっと意外だった。


「一緒にいてくれる兄さんがいて、かな。
 オレのとこそーゆー記憶あんまりなくて。」

そう言って、照れたように笑う。
そうだ、紅印たちが言ってたっけ。
あの大阪のピッチャーがてんごく君の兄貴だったって。


あれ、何?
じゃあオレにそーなってほしいのかな?てんごく君は。




「ねーてんごく君。

 オレって雉子村くんに似てる?」


そう聞いたら、びっくりした顔をする。

自覚ない?


「え?まっさか!

 アニキはあのとーり凶悪面ですし。剣菱さんになんて…。」
「だったら。」



「オレをアニキの代わりにはしないでね?」


「え?」



二度驚いたてんごく君の顔。
もう一回見て、俺はにっこり笑った。



「オレね、凪からとりたいくらいてんごく君の事愛しちゃってるんだよね〜。」



だから、オレを「兄」のカテゴリーにいれないでよ。
不本意ながら今は君の恋人は、凪だけど。


ずっとそのままになんかしたくないから。


だってオレもほしいから。



「だからね、てんごく君。」


オレはそっと君の頬に手を伸ばした。
そしてはっきりと宣告する。



「覚悟してね。」



オレが君のすべてになってあげるよ。
君はオレのすべてだから。



                          end



リハビリです。単発剣猿。
今回は笹川美和さんの「先」の歌詞がちょこっと入りました。この唄大好きなんですvv

しかし何回も使っちゃいますねー。
天国のお兄ちゃんが居て羨ましいネタ。使い勝手よすぎです;;
結果ワンパターンにも程がありますが。
だってー兄キャラ多いんですもん!!(何の言い訳だ一体)


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