遅刻した天使



 「え〜〜っ!?屑桐さんて昨日誕生日だったわけ?!」
 「…ああ。言ってなかったか?」
 
 年末の忙しいさなかを家から抜け出して、天国は恋人の元にたどり着いた。
 屑桐宅でも、当然のごとく正月の準備に追われていたが。
 天国を常日頃とっても気に入っているご家族は返事も聞かずに長男を玄関の外に放り…いや、送り出したのである。
 そして、どこか暖かいところにでも、と思ったところでこの話題が出たのである。
 
 「聞いてねーよ!うっわ、もったいねえ!!」
 「?なぜお前がもったいながるんだ?」
 
 「だって…ッと…。」
 突然天国は口をつぐんだ。
 (言えるわけねーっつうの!二人きりなる口実逃したなんて。)
 
 うつむいて顔を真っ赤にしてしまった天国に、屑桐はふっと微笑を浮かべた。
 
 「まあそう残念がるな。
 お前が望めばいくらでもそばに居られるぞ?
 今日が良い例だろう?」
 
 「なっ!!なんで分かったんだよ!!」
 まるで思っていたことを読み取られたような返事に、天国は大慌てで顔を上げた。
 その顔はやっぱり真っ赤で。
 
 
 プッ
 
 
 「あーっ!笑ったな!」
 「ククッ・・・すまん。まさかそんなに素直に返してくれるとは思わなかったぞ。」
 そう言って笑いをとめられず、屑桐にしては珍しく心から笑った。
 
 「…屑桐さん…。」
 「ん?」
 
 笑いつづけていると天国が屑桐に改めて声をかけた。
 見ると天国は少し驚いた顔をしている。
 
 「どうした?」
 「いや…屑桐さん…なんつーか…。」
 天国は驚いた顔のまま言いよどんでいる。
 「どうした?言いたいことがあるなら言ってみろ。」
 
 
 
 すると、天国はこう言った。
 
 
 
 「屑桐さんて、年相応の笑い方もできるんすね。」
 
 「は?」
 
 屑桐は少ししてからかなり失礼なことを言われていることに気づいた。
 さすがにむっとして屑桐は聞き返した。
 
 「…どういう意味だ?天国。」
 「いや、そのまんま。」
 天国はにこっと笑う。
 その笑みにちょっとした怒りはすぐに霧散してしまった。
 
 
 「だって屑桐さんてあんまり高校生ってカンジしないじゃないすか。
  笑うときだってさ、こう胸を張って「フハハハハ」じゃないすか。」
 
 「真似をするな、真似を。」
 
 今度は天国が笑って屑桐のモノマネをする。
 屑桐にとってはその姿は照れくさい。
 と、言うか…そう言う風に見られているのか、と改めて思ったりもした。(自覚はあったらしい)
 
 
 「あははは、すみません。
  それじゃ、とりあえず…。」
 
 
 そう言うと、天国は屑桐の腕に抱きついた。
 
 
 「Happy Birthday. Mr.Never end.」
 
 天国はにっこりときれいな笑みで屑桐に誕生日祝いの言葉を言った。
 
 「?なんだ?そのミスターネバーエンドってのは・・・。」
 
 「屑桐さんの名前、無涯ってんでしょ?「涯の無い」って書くじゃないっすか。
  だから英語で「Never End」っすよ。」
 「ああ…。」
 
 
 そんな風に考えたことも無かった。
 
 悪くない。
 
 
 
 屑桐はふっと再度口元を緩めた。
 
 そして。ひとつあることを思いついた。
 
 
 
 「とにかく、今日はお祝いに全部おごりますよ!
  一日遅れだけど誕生日祝いに!!」
 
 
 「・・・いや、それには及ばん。」
 
 
 「へ?」
 
  
 「その代わり、ひとつ言うことを聞いてもらおうか?」
 
 
 
 
 「え?いいっすけど…。」
 
 天国はできる範囲にしてくださいよといった顔で屑桐の返事を待った。
 
 
 
 
 「これからはオレのことを名前で呼べ。
  いいな?天国。」
 
 
 「え…!」
 
 
 
 「断るな。プレゼントに要求させてもらうぞ?」
 「そんな…、恥ずかしいじゃないっすか〜!!」
 
 
 
 「聞かん。」
 
 
  屑桐は天国の言い分を却下する。
  
 
 「ったく〜。こんの我侭紙ヒコーキ・・・。」
 
 
 「そう呼べとはいっとらん。」
 
 ちょっとしたいやみを言うとさっくり返してきた。
 
 
 
 「しゃあねえな・・・。」
 
 
 
 
 
 そして天国は頬を少し染めて
 
 
 
 言った。
 
 
 
  
 「18歳おめでと。
  …………無涯。」
 
 
 
 
 かえってきたことば は
 
 
 
 
 ありがとう。
 
 
                                 end.
 
 

こんにちは。貧乏性なもので出来て送ってまたやってしまいました。
屑桐君12月29日でお誕生日です。おめでとさん!
18歳かあ。原作ではまだまだセブンティーンな彼ですが。
この頃はもうプロ野球入団が決まってそうですね〜。
(つーかプロ入り決め付けてるし。)
大掃除も程ほどにしたい時にしか書かないおーちゃくもん、S.青沢でした。

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