冷たい



オレは今あいつを探している。

いない。

ここも。

あそこもいなかった。

どこにいるんだよ?

いつもならうるさいくらいにオレに関わってくるくせに。

こんなに探してるのに、どこにいるんだよ?


いつのまにか雨が降ってる。

まだ夏も終わりきってないのに、やたら冷たい…。

あいつと初めて本気で勝負した日も雨が降ってた。

あの日の雨は、熱くなってた頭と身体のせいで何も感じなかったのに。


あれからもう2年がたった。

その間に、あいつは全国でもオレと1、2を争うスラッガーに成長しやがった、

最初に会ったときは素人丸出しだったくせに。

今年の夏には、2年前に大阪の芸人野郎がぬりかえた記録に並んだ。


なのに。


最後の夏のあと、あいつはいなくなった。

だからオレはあいつを探してる。


ここにもいない。

どこ行ったんだよ?

このオレが探してやってるのに。

どこに…。




「御柳!!」
「御柳くん!!」




「…。」

聞きなれた声がかけられ、振り向くと幼馴染が二人。

「何してやがる。」

こいつはあいも変わらず不機嫌なツラしてやがる。

「…邪魔すんな…。」

「御柳くん…。」

こいつも相変わらず心配性だな。

ホントに二人とも変わってねえ。


…変わったのはオレだけだ…。


あいつと会って…もっと変わったよな。

…そうだ、あいつがどこにいるのか…なんでいないのか…知ってるよな、こいつらは…。




「あいつ…どこだ?」



教えてくれよ。



「なんで…いねーんだよ…?」



「御柳…。」

目の前のこいつは、驚いた顔でオレを見た。

オレはそんなにブザマか?

冷たい雨ん中、傘もささねえで、人一人見つかんなくて…泣いて…。


無様だよな…。

あいつが見たら絶対笑うよな。


笑ってもいいから…出てきてくれよ…。



ぼんやり考えていると、目のお前のこいつはオレに向かって言った。



「御柳…ちゃんと聞けよ…。」


聞いてるぜ?何言ってんだよ。



「あいつは……#####…。」


あ?聞こえねえ…。


「なんて言ったんだ…?聞こえねえよ、もっとはっきりしゃべれ。」



そう言ったら、こいつはいきなりオレの襟を掴んできた。



「しっかりしやがれ御柳!!

 てめえはまた見ないフリする気か?!」


すげえ形相だ。…けど、何、言ってんだ…?


「大神さんの時みたいに!! また逃げんのかよ!?

 あいつから!! あいつの死から!!」



死?



死。







そうだ。





あいつ 猿野 は 死んだんだ



オレの目の前で この世から いなくなったんだ





「御柳くん?!」

「おい!」


足元が崩れていく。


冷たい雨の中で オレは意識を失った。


######


『御柳ぃ。』


覚えてる、お前はよく怒ったよな。 それと同じくらいよく笑ってた。

お前の笑った顔、結構好きだったぜ?

ホントはもっと笑ってほしかった。


怒らせてばっかだったけどな…。


お前が傍にいるの、すげえ居心地が良かった。


もっといたかった。


いたかったんだよ…。



######

「御柳くん!」


眼を開けると、そこに辰羅川の心配そうな顔があった。
どうやらここはオレの部屋らしい。


「辰羅川…オレ…。」
「よかった。気分はいかがですか?君は丸二日も眠ってたんですよ。」


二日…雨の中であいつを探し回って、ぶったおれてから…だよな、やっぱり。


…あいつを探して…。


「…あいつは…?」


オレがあいつのことを聞くと、辰羅川は少しだけ表情を変えて、言った。


「今度は覚えてるようですね…。今日は…もう初七日ですよ。」



「そっか…。」

オレはそれだけ言うと、目を閉じた。

辰羅川は察してくれたみてーで、席を外していった。



本当に、いないんだな。


もうどこにも。


どこに行っても、お前に会うことはないんだな。


そしてオレは泣いた。



冷たい雨はまだ降っていた。




end



痛くて暗くて芭唐が壊れててすみません!!
13のお題、死にネタばっかりですね…。

苦手な方はホントに見ないように!!(ってここで書いてどうする)



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