積み木



ひとつひとつ 積み木を重ねるように、過ごしてきました。

ひとつひとつ 貴方を好きになっていきました。

それを伝えても いいですか?
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「ふう…。」
ノートパソコンを閉じると、辰羅川は帰り支度をした。

部を引退して数週間、まだ部活のない生活パターンには慣れていなかったが。
ようやくそれも日常になって来ていた。

それでもランニングや筋トレは欠かしてはいなかった。
もうチームメイトとして犬飼の球を受けることは無くても、日課であったし。
犬飼の幼馴染であり友人であり、キャッチャーであったことは変わらない。

そしてそれと同時に、彼と同じチームで野球したことは変わらない。


そこまで考えて、辰羅川はふ、と息をついた。

自分が今でも彼を想っているのに苦笑する。


叶うはずのない恋をしている自分に。



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「おーい、辰羅川ぁ!」
帰宅途中に声をかけられ、辰羅川は振り向いた。

そこにいたのは、長い間いがみ合っていた、今では和解した友人。
御柳芭唐だった。

「御柳くん。今帰りですか?」
「ああ。こっちも引退したかんな。お前も暇そうだな。」
「まあ暇といっても受験生ですからね私は。
 そこそこやることはありますよ。」

「おーぉ、マジメだな相変わらず。つってもお前なら楽勝だろ?
 県内でベスト3とか言ってなかったか?」
「…まあ、私のとりえはそこくらいですから。」
自嘲するように言うと、御柳は呆れたように言った。

「お前な、甲子園優勝チームのレギュラーがそれ言ったら嫌味じゃね?」

「優勝は個人でするものじゃありませんよ。」

「ピッチャーやバッターだけで優勝できるわけでもねえだろうが。」
ちったあ自慢しろよ。と少し怒ったように言う彼に。

彼も変わったな、と辰羅川は思った。


(彼と深く関わったから…ですね、きっと。)


御柳も1年の夏から変わった。
サボリがちだった部活もマジメにこなし、全国でもトップを争うスラッガーになっていた。
そして御柳と争っていたのは…彼。


尊敬していた人にそっくりな、でも全然違う彼。


(私たちの闇をすっかり払ってしまったのですね、キミは。)



「…猿野のこと考えてんだろ、お前。」
「え?!」

自分の思考に漂っている中、突然図星を指され辰羅川はびっくりした。


「図星だな、分かりやすい奴。」
「な…御柳くん!」

「何、告らねーの?」
「え??!!」

そのまま発展する内容に、辰羅川は焦りを隠せない。

「い、いえ私はそんな…!」
「そんな、何だよ。好きなんしょ?」

さらりと言う御柳に、辰羅川はごまかすのを諦め観念する。

「…私はそうでも…猿野くんが…迷惑ですよ。」
そして不安をもらす。
むしろ仲がいいのは御柳の方では、と思いながら。


「オレはもうフラれてんの。1年の冬にな。」


さら、と続けられた答えに辰羅川は愕然とした。


「フラれ…って、1年の時にですか?!」
「そ、猿野のこと好きでしゃーなかったから。…今でも好きだけどな。
 そっこー告った。けど結果は惨敗…ってやつだったぜ?」

「そんな…。」
「でもオレは後悔してねーの。
 アイツが好きなのはホントだしな。

 お前はどーなわけ?」

御柳は強い、と辰羅川は改めて思う。
自分も、そうしなければならなかったのに。
多分彼よりも長く、天国の事を思っているのに、自分は。


想いを自分の中で積んで重ねて、溜め込んでいただけで。


「お前もさ、堅実結構だけど…少しは自分を出せよ。
 犬飼の為ってのももうお役御免だろ。」

「…それは…。」

心配してくれているのですか、と聞こうかと思った。
だけど彼はそんなことを素直に頷いてはくれないだろう。


「あいつは蔑ろにはしねーよ。
 そんなことお前の方が知ってるだろ?」



「…そうですね。」


そう、いつもふざけている様でも人の気持ちには敏感で、真摯で。


そんな貴方が大好きだから。


「ありがとう、御柳くん。」

「…どーいたしまして。」


私も貴方も、そんな彼が大好きなんですよね。
辰羅川は決意を固めてみよう、と思った。



その日の夜、かけた電話。



新しい積み木を一つ。



ほら、私は貴方を こんなにも好きですよ。



                                      end


リハビリです。なんか分かりにくい文章ですみません。
告白の決意をするたっつんと背中を押す御柳くん。

…何か組み合わせとしてありえないような…。
天国出てないし…なんか消化不良っぽい。
でも書いてて楽しかったですね。
3年たっつん、男前で惚れてます!



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