渡り廊下


一つの絵を見ているようで。




「犬飼くん、次は移動ですよ。」
「…とりあえず、分かってる。」

ほとんど保護者な親友に促され、犬飼は教室を出た。
次の授業は生物。
確か、つまらない実験だったはずだ。


「今日は葉緑素の色素の実験でしたね。
 午後一の授業で眠れないのは残念でしょうけど、しっかり受けてくださいよ。」
にっこりと多少以上の嫌味をこめた辰羅川のセリフに、犬飼の視線が泳いだ。
「……。」



そんな時。

「うら〜天国!!てめえオレのめんたいこパンをよくも食らいやがったな〜〜!!」
「うっせー!世の中速く美しいものが勝つ!!」

わけの分からない理屈で渡り廊下を走ってきたのは、猿野天国。

その姿を見て、犬飼は気持ちが浮き立つのを感じた。
ちょっと顔が見れただけで嬉しいなんて、相当重症のようだ。


我ながら趣味悪いとか思うけど。


そんなことを考えていると、その対象が目前に迫っていた。

「コゲ犬、肩貸せ!」
「あ?」


声をかけられたと思うと、肩に軽く重みがかかった。



スローモーションのように。


猿が、跳んだ。




猿野は、そのまま犬飼の背後にあった下り階段の下の方まで跳んだ。


天国は犬飼の肩に乗ってそのまま跳馬の前転跳びをしたのだ。


その姿は、身軽で優雅にすら見えた。


「ちっ!待ちやがれ天国〜っ逃がさねえぞ!!」

それを追いかけて、沢松も走り去っていった。



「…アンビリーバブルですね。猿野君があんなに身軽だったとは。」
辰羅川の驚く声で、犬飼は我に返った。


凄く、綺麗で。


また一つ、好きになった。


今度は…捕まえれたらいい。



そんな風に、思ったりした。



なんなんでしょうこれは…。
なんつーか、体操猿?新ジャンル確立か?
これこそヤマなしオチなしイミなしですね…。

今度こそ犬猿でシリアス書きたいな〜・・・。

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