遥かなるあなたに








結局うやむやにされたまま、話は終わらされ。
再度車に乗り込み帰途についていた。

芭唐は当然の如くもやもやと抱えてはいたが、それ以上は言及できずにいた。

正直なところ答えを聞くのが少し怖い。
少なくとも自分の兄が天国にとって特別な存在でないはずはないから。
その答えが恋人だった時、自分の持つだろう感情は予想できる。
というか一つしかないだろう。

嫉妬だ。
むしろ現在進行形でそれを感じている。

そして天国にとっての自分の存在にも。


(俺って…天国にとっては何なんだ?)


ずっと抱え込んできた問い。
まだ勇気は出なかった。


となりで運転する天国の横顔を見ながら、気づかれないようにため息をついた。



#####  


天国の選んだレストランで食事を取った後、特に目立った会話もなく。
いつも通りの生活行動を終えた二人は、就寝する時間を迎える。
見た目通り明日の予習復習などというものと縁のない芭唐は、早々に床に就く。
(ちなみに、勉強しなくともそこそこ成績はいいという周りに喧嘩を売った頭は持っていた)


「………。」
いつもどおり、寝心地のいいベッド。
気に入った部屋。

全ては天国に与えられたものだ。

(…全部あいつからもらったんだよな…。)
体がでかくなって一緒に買いに行った。

家具選びから、全て芭唐にさせてくれた。


「……全部おんぶにだっこ…かよ…。」
今更のことだと思いながら、そんな思考が頭から離れない。

守りたいと思ってても、守られてるのは自分ばかりで。
支えたいと思ってても、支えられてるのは自分ばかりで。

あいつのために何かしたくても、全部してもらってばかりで。


(オレはガキだ。)


どうしようもなく。


「…ちっ。」
泥沼に入り込んだ思考に苛立ち、ベッドから起き上がる。

(水でも飲むか…。)




#####




部屋を出て、ふと奥の寝室に目をやると明かりがもれていた。
言うまでもない、天国の部屋だ。

(…まだ起きてんのか?)
明日も早いのに、と思いながら何をしているのか気になった。

そのまま会いに行ってもよかったが。
少し足音を潜めた。


部屋をのぞいてみると、天国はアルバムを開いていた。
見たことのないもの。

入口に背を向けていたため、芭唐には顔が見えなかった。


だが、声は聞こえてきた。
懐かしそうに、愛おしそうに言った。



「……懸さん……もうあいつも15だよ。

 早いよな。」



「………。」


その声を聞いて、たまらなくなった。



(…オレは…。)



本当にどうしようもなく。子供なんだ。



天国にとっては…。




その日は結局、眠れなかった。


胸が痛かった。




                       To be Continued…



数年ぶりの連載再開です。短いですけど!!
何考えてるんだかな私;;
バリハケン一巻購入で信也先生への敬愛と天国への愛を燃やしなおしましたvv

またゆるゆる書いていきたいと思います。
というか読んでくださった方、本当にありがとうございます!



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