遅かりし感情
3
キョンを引っ張って保健室にたどりつくと、
カギは開いているが、先生は出ているようだ。
さて、どうしたものか。
「…タイミング悪いな。」
そう言いながら、頭も冷えてきた。
なんかオレさっきからすげえ恥ずかしいこと言ったりしたりしてないか?
現在進行形で手を握ってるし。
さっきなんか堂々と古泉に宣戦布告っぽかったり…。
オレ普通に平和主義者なつもりだったんだけど。
いや、別に後悔してるとかじゃ…ないけどな。
勝手に気まずい気分になってキョンの様子をうかがうように顔を見ると。
…これは…。
「仕方ないな。まあここまで来たんだし…。
鍵あいてるしな、入ろうぜ。」
全く気にしている様子なし。
脱力したオレの手から何の抵抗もなくすっと離れ、
保健室に入って行った。
(…空気読め…。)
そう思いながらオレも湿布くらいは探すのを手伝うか、と保健室へと入った。
が。
「あー榊、ちょっと出てくれ。
脱がないと貼れんとこに貼らんといかんからな。」
「…悪い。」
どうやらすぐに湿布は見つかったようで、
オレはそのままUターンを余儀なくされた。
まあ流石に男の前で脱げるほどじゃないようだ。
……いや、何も考えてないぞ。
……うん。
それから数分間。
衣ずれの音と、湿布の冷たさに反応するかすかな声を背後に聞きながら。
……やはり悶々としてしまっていた。
(けっこ細いんだよな…キョン…。)
目立ってスタイルがいいとかじゃないが、
ダイエットとは縁のなさそな体形…というのが
もっぱらクラス内男子間でのキョンの評判だ。
しつこいがそれなりに可愛いし。
クラスの中でもキョンを嫌う男はいなかった。
(あんなにあいつを好きな奴がいるとは…さっきまで思ったこともなかったけどな)
先ほどの怒りに満ちた古泉の顔を思い出す。
嫉妬する人間はあんな顔をするのか、と改めて実感するような顔。
整ってる分迫力があった。
(…オレもあんな顔…してたのか…。)
はあ、とため息をひとつ。
ふと、前に誰か来ているのに気づいた。
「?」
視線を上げると。
「お前…。」
「……。」
寡黙で無表情な少年がそこにいた。
「なんだよ?」
「貴方に用はない。彼女を。」
迎えにきた、とそいつははっきりといった。
To be continued…
やっと落ち着いてきたのでようやく更新開始です。
といっても携帯の方は結構ぽちぽち進んでたんですが…。
またPCサイトもゆっくり更新していきたく思います。まず再録からですが;
すみませんこんな奴で…;
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