遅かりし感情
6
−10分程前
「彼女は、中?」
キョンを迎えに来たと保健室に現れたのは長門有希だった。
こいつが喋るの初めて聞いた…。
そう思いながら俺は頷いていた。
「そう。」
それだけ答えると長門は俺の横から保健室の扉に手をかけると、躊躇いなく開けた。
「お、おい…!」
まだキョンが着替えてる!と言おうとした。
けど。
「わ!…って、長門か。ちょうどよかった。」
一瞬驚いたキョンの声は長門の姿を確認すると
安心したように言った。
「背中のここんとこ、これ貼ってくれるか?」
「わかった。」
「え…。」
驚いている間に長門は俺を無視して保健室に入った。
さもそれが当然というように。
「…なんで…。」
あいつは、いいのか?
キョンに投げかけた質問は音にならなかった。
####
「サンキュな長門、助かった。」
「…いい。」
しばらく時間がたち、二人は保健室から出てきた。
俺の姿を確認したキョンは俺に笑いかけた。
「あ、榊。
悪いな、待っててくれたのか?」
「…いや、別に。」
「いろいろ世話になったよな。また改めて礼はするから!
部活あんだろ?
ほんと、サンキュ。」
屈託なく感謝の言葉を並べられ、下降した気分が少し元に戻る。
我ながら現金なものだとも思うが。
しかしキョンの後ろから出てきた長門の顔を見ると再び気分は下降した。
「別に、気にしなくても…。」
「まあそう言うなって。
たいした礼はできないけどな、また今度。」
「…ああ。」
それでもキョンが笑って約束してくれるのをみると再度気持ちは昂揚する。
一喜一憂していると、長門が口を開く。
「…時間。涼宮ハルヒコが怒る。」
「あ、そうだな。
じゃ、榊。また明日な!」
「ああ、また明日。」
それが10分前のこと。
結局彼女はあの場所に戻る。
そんな気にもしていなかったことが今は信じられないほど心に刺さっていた。
「…少し…やばい…かもな。」
誰も聞いていないぼやきを俺は一人呟いた。
To be Continued…
キョン子ちゃんは有希くんには無防備のようです。
まあ、そうかな…;;
戻る